また一滴、顎から鎖骨へと滴り落ちた。 雫が落ちた先を眺めながら、濁り酒のような色の肌だ、と仰木はおもった。 その白い肌は蒸すような暑さにじっとりと汗ばみ、はだけた浴衣の胸元から、片膝を立てて割れた裾から垣間見える太腿から、透明な汗の玉が、ツッ…と流れ落ちる。 きわどいところまで割れた合わせ目に釘付けになっている仰木の視線を知ってか知らずか、 鮮やかな緑を眺めても、気温が下がるわけでもない。 「暑くないのか」 思わず問えば、アカギは仰木をちらりと見た。 「暑いに決まってるでしょ。扇風機を頼めば断られるし」 涼しげな顔だが、声には不満が滲み出ている。 「あんな貧乏くさいもん、屋敷に置いてたまるか」 クーラーなら入れてやると言ったのに、あれは音がうるさい、冷えすぎるのは嫌だと断られた。 口を真一文字に結んで拒絶の意を示せば、アカギは今度は顔をこちらに向け、正面から見据えてきた。 「ただでさえ暑いのに、あんたの視線が身体中に絡みついて、よけいに暑苦しい」 仰木はぎくりと身体をこわばらせた。こちらをまっすぐに見据える目は笑っていない。 「すまん…」 不埒な目で見ていたことは確かなので、素直に謝ると、アカギはすっと立ち上がった。 「まるで全身を舐めまわされているみたいだった。そんなにやりたいなら、試してみるかい?」 大きな猫に乗られた気分だ。はだけた胸元から、乳首の先端に雫がたまっているのが見える。 「あっ…」 口にした果実は、しょっぱかった。すでに硬くなっている実を舌でなぶりながら、もう片方の胸にも手を差し入れた。 「ぁ…ん…」 裾の合わせ目にも手を這わせる。 両方の乳首が固くなり、腫れあがったように大きさを増すまで口と指で交互にその感触を堪能した後、体勢を入れ替えた。 湿り気を帯びた薄い茂みに手を伸ばし、奥にあるものをいっぺんに掌におさめて揉みしだけば、アカギは目元を赤くして、潤んだ目で仰木を見た。 「ぁあん…」 手のひらを前へと移動させ、最も敏感な部分に触れてやると、アカギは恍惚とした表情で嬌声を漏らした。 「はっ…あぁ…」 指の腹で入口の周りを円を描くように撫でると、行為に馴れた様子のそこは、挿入を期待するようにひくひくと蠢いた。 仰木は指を増やして内部を掻きまわしながら、もう片方の手で浴衣の帯を解いた。 仰木は帯を解いた手で自分の前を寛げ、とっくに固くなっている赤黒い欲望を取り出すと、白い脚を抱えあげ、いやらしい秘所を一気に貫いた。 「はっ…あああ…ッ」 いきなり押し入ってきた雄の大きさに、さすがのアカギもつらそうに眉を寄せる。 「あっ、あっ、あんっ、あんっ」 脚を限界まで開かせ、真上から腰を落とすように突きこむと、深い結合にアカギは苦しそうにしながらも淫らな喘ぎ声をあげた。 ひとしきり突いた後で一度引き抜き、獣のように這わせて後ろから突き入れる。 「いやらしい身体だな…もっと鳴かせたくなる」 仰木は力の抜けたアカギの腰を後ろから引き寄せ、自分の膝をまたがせた。 ゆっくり突き上げているうちに、アカギの分身も再び頭をもたげてきた。 欲望を吐き出してしまえば後に残ったのは苦い後悔で。 「おまえ、やたらとうちのもんに手を出すなよ」 まんまと網にかかって寝てしまった自分が言えたせりふではないが、一言いっておきたかった。 隣に裸のまま寝そべってタバコを吸っていたアカギが顔をあげた。 「何の話?」 「誰と寝ようと勝手だが、この前おまえにつけていた世話係を病院送りにしただろう。 仰木の言葉にアカギはああ、あれね、とようやく合点した。 「あれは向こうから粉かけてきて、退屈だったから一回相手してやっただけですよ。 仰木はこめかみを押さえた。 「相手が欲しいなら男でも女でも、いくらでも用意してやる。頼むから…」 「あんたが相手してくれればいいよ」 掬うように見上げられ、仰木は言葉につまった。 「あと扇風機ほしい」 「…」 結局その夜、屋敷に初めて扇風機が届けられることになった。
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