いつも一緒にいられる 最も簡単な方法
生徒手帳
とある休日。進宅で勉強を教わっていた瀬那は休憩の言葉にほっと息を吐いた。進の教え方は上手だし、授業のような苦しさはないけれど、それでもやはり元々勉強が苦手な瀬那。限界だと頭から悲鳴が聞こえているようだった。 「少し進め方が早かったか?」 ぐたりと机に突っ伏した瀬那を心配して、進が覗き込む。そんな事は…と瀬那が答えようと顔を上げれば顔の距離がぐんと近くなった。 「あ……」 ちゅっとそのまま唇が重なり合う。瀬那も素直に受け入れて何度かその行為を繰り返した。口づけは自然と深くなっていき、舌を絡ませながらいつのまにか、床に倒れ込む形になる。 「はぁっ…し、んさん……まだ宿題…」 言葉を続けようとする瀬那の唇を再び塞いで、Tシャツに手をもぐりこませた時 『〜♪〜♪〜〜』 タイミングがいいのか悪いのか微妙なところだが、瀬那の携帯が鳴った。着信音を聞いて、すいませんっ、と瀬那は進の下から抜け出し携帯が入っているカバンへとダッシュした。カバンの奥の方に入れていたのか、瀬那はカバンの中身を焦りながら取り出し、やっと携帯にたどり着く。 「あ…蛭魔さん……から…」 そう言って、瀬那は携帯を持って部屋の外へと出ていく。途中すいませんっと勢い良く謝る声が聞こえた。おそらく出るのがおせぇ!とでも怒鳴られたのだろう。 一方残された進は所在なさげにその場に正座していた。イイところを邪魔されて腹立たしくない事もないが、まだ日差しも高い午後3時。その行為に及ぶにはまだ随分早い時間だと反省もしていた。そんな進の目に映った、瀬那のカバンの荒れた様子。 「…片付けてやるか」 腰を上げて、瀬那のカバンの所へ行く。タオルや教科書、着替え、はたまた進が全く目にした事がない漫画も辺りに散らばっていた。綺麗にカバンの中に戻していけば、ふと手にしたものに進は興味を引かれる。 「生徒手帳…?」 泥門高校と大きく書かれ、その下に小早川瀬那とこれまた大きく書かれた手帳。特に何も考えずに1ページ目を開いた進は、一瞬固まってしまった。 「こ、れ…は」 そこにいたのは、アメフトのユニフォームをつけた自分の姿。そしておまけに最後のページには制服姿の自分の写真まで。 「………」 あまりの気恥ずかしさに進はばんっとその手帳を閉じる。見てはいけないものを見たような背徳感とそれに確実に勝っている幸福感。柄にもなく顔を真っ赤にして、再びその場に正座していた。
「明日の練習の事で…って進さん?どうしたんですか…」 振り返っただけで反応を示さない進を不審に思い、瀬那が駆け寄る。そしてさっき自分が出したカバンの中身が綺麗に戻されているのに気付いて慌ててお礼を言った。 「あ、ありがとうございますっ…散らかしたままで出ていっちゃったから……」 それでも進から何も返事が返ってこない。本当にどうしたんだろう、と瀬那が進を良く見ればその手に握られているもの。 「あーーーーー!!」 瀬那にしては珍しく大きな声を上げて、急いで進の手からそれを取り上げる。そして恐る恐る進に訊ねた。 「も、もしかして…中身………」 その一言で全てを察した瀬那は、進と同じようにその場に正座する。別に隠し撮りをした訳ではなく、ユニフォーム姿は大会の時の、制服は文化祭の時撮らせてもらったもの。しかし、やはり勝手に写真を手元に置かれるのはあまりいい気がしないだろう、と瀬那は次に発せられる進の言葉をびくびくしながら待っていた。
「…?これ…」 それは明らかに泥門よりも高級な素材で作られているだろう、真っ白な手帳。王城高校と大きく書かれ、その下には瀬那も良く知っている律儀な文字で2年進清十郎と書かれていた。
「…………」 口元に手をあて、照れを隠している進。1ページ目にあったは私服姿の自分、そして最後のページにあったのはアイシールドをつけているユニフォーム姿の自分の写真。 「進さん…」 照れながらも、その顔は嬉しさを隠しきれないようだった。瀬那は我慢できず、がばりと進に抱きついた。 「小早川っ…」 絶対カメラ持ってきますから、と瀬那は伝える。 「その方が一緒にいられる気がします」 約束するように、そっとキスをした。
8888を踏んでくださったきょうこ様よりリクエストしてもらいました進セナです。。らぶらぶな二人を…との事だったのですが……も、最早ただのバカップルに……!(汗;)でもこの不器用な二人はこういう典型的な恋人同士の事をしていそうだなぁ…なんて思ってこういう話にしてみました。。お、お持ち帰りしてもらえれば大感謝ですv
セナに勉強をおしえてあげる進さん。セナのかばんを片付けてあげる進さん。セナの写真を持ち歩いている進さん。 |