「俺が出かけたらちゃんと鍵とチェーンかけろよ。チャイム鳴ったって簡単に
出るんじゃねーぞ。窓とか開けっ放しで昼寝するなよ」
「啓介さん、はやくしないと遅刻しますよ」
「んー・・・」

玄関先で、まだ名残惜しげに拓海を離さない啓介に、拓海は背伸びをして
いってらっしゃいのキスをする。未練をのこしたキスは2回、3回と続くうちに
あいさつの域を超えて、拓海の息が乱れる頃にようやく開放される。

「・・・浮気すんなよ」
「バカ」

まだ潤んだ目で睨む拓海に、啓介は小さく笑ってドアに手をかけた。

「じゃ、行ってくるな」

ロータリーエンジンの音が、朝の住宅街を後にする――

 

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