渇望
――俺の勝ちだ。アイシールド21. ――こんな程度で終わる男だったのか?
「・・・ナ・・・セナ」 力強く揺さぶられて、ぽかりと目が覚めた。 「何を泣いている?」 ああ、ぼやけて見えるのは、涙のせいか。 「進さんに負ける夢、みた」 夢の中での進の、失望と落胆が入り混じった目。 「僕は何一つ進さんに敵うものなんかなくて、だからいつか進さんにおいていかれたら、 それを考えただけでたまらなく悲しい。 「俺、いつまでもあなたの好敵手でいたいです」 ぼろぼろと涙をこぼしながら、進に訴える。 「それでも、お前は俺に勝っただろう」 静かな進の声がセナの心に響く。 「俺も、お前に抜かれる夢をみることがある」 意外な言葉に、セナの涙が止まった。 「夢の中で、お前は俺の手が届かないスピードで走り抜けていく。 あくまで淡々と語る、進の真摯な言葉に、止まっていたセナの涙がまた溢れ出す。
「もう泣くな。お前に泣かれると、どうしていいかわからん」
おわり |