ばすたいむ




風の谷にあるシルフ王城。

ペガサスの意匠の三角旗がはためく優美な城の中には、温泉が湧き出る岩風呂があった。

妖精王オーディンの次に力を持つシルフ王家のまだ幼い二粒の宝石、「氷の風のジル」と「炎の風のエア」は、

一日の勉強や鍛錬が終わると、その岩風呂に浸かって一日の疲れをとるのが習慣だった。

「痛っ…」

湯船に入る前にジルに身体を洗われていたエアは、泡だらけの背中をびくりと震わせ、兄の両腕に爪を立てた。

肩甲骨に届くくらいまで伸びたクランベリー色の髪も、一緒に震える。

「だめだよ、エア。ここも毎日綺麗にしないと」

目をぎゅっとつぶり、涙をこぼす弟を穏やかに諭しながら、アクアブルーの髪を

エアと同じくらいの長さに伸ばしたジルは、幼い性器を覆う皮をめくり、

その中に眠る先端をシャボンの泡をつけた指で丁寧に洗った。

皮をむかれるのも、その内側に眠る皮膚の薄い、敏感な先端に触れられるのも痛かったが、

毎日洗わないと病気になる、そうしたらここを切られてしまうかもしれないよ、と脅されては、

兄の言うとおりにするしかなかった。

「あっ…」

先端への強すぎる刺激に慣れてくると、むずむずとした気持ちよさが下腹へと集まってくる。

「エア、僕のも…」

ヤシの実の殻で作られた器に甘いベリーの香りのする湯をすくって股間の泡を洗い流すと、

ジルが余裕のない声でエアの手に自分の先端を握らせる。ジルは自分で剥いていて、

エアの指がピンク色の先端に触れると、切なげな声をあげた。

ほぼ同じ形、同じ色をした二つの性器は、お互いの手の中で硬く大きくなって脈打ち、

先端から透明な液をこぼしている。

敏感な先端をくっつけて擦りあうと、二つは吸い付くようにひとつになって、

頭の中が真っ白になるような快感を覚えた。

「ああっ…ジル…おしっこ、でちゃう…!」

「エア…!」

二人は同時に、白い精を吐き出した。

真っ赤な顔をして荒い息をつくエアに、ジルが口づける。

「エア、これはおしっこじゃないよ。前にも言ったけど」

指を濡らす、二人のものが混ざった精液を弟に見せつけると、ジルはそれをぺろりと舐めた。

そしてぎょっとするエアの口にも指を入れる。

「…まずい」

エアは顔をしかめ、ジルはくすりと笑った。

「そうだね。でもエアのなら、僕はおしっこでも飲めるよ」

ミントキャンディ色の瞳が夕暮れ色の瞳をやさしく見つめて、ジルは愛おしげに弟のピンクの髪をかきあげた。




「…なんてこともあったね。剥いてあげる度に痛がって泣くきみは、本当にかわいくて」

「兄貴…」

つい去年までのことを懐かしそうに話すジルの肩に、エアは疲れたような表情でぐったりともたれかかった。

ここは妖精たちの学園、フェアラルカ中等部の寮の中。

部屋ごとについているバスルームの、たっぷり泡立ったバスタブの中で、

二人は今日も仲良くバスタイムを楽しんでいた。

エアにとってジルとの風呂は、甘い、秘密の時間であると共に、軽いトラウマでもあった。

毎回風呂の時間が来る度に、ジルとずっと一緒にいることを選ぶか、あの痛い行為を避けることを選ぶかで

ずいぶん真剣に悩んだものだった。

それを楽しんでいたらしい鬼畜な兄に、もう抗議する気力も失せていたエアは、

ふいに泡だらけの湯の中で性器をつかまれて、びくりと身体を跳ねさせた。

その拍子に、ぬるま湯がちゃぷんと音をたてる。

「僕が毎日剥いてあげたから、きみのもこうしてちゃんと大人の形になっただろう?

もう剥いてあげる楽しみがなくなってしまったのは残念だけど」

「あっ…んんっ…ジル…」

いやらしくそこを扱かれて、エアの声が途端に艶めいたものに変わる。

未だにピンク色をしている先端は、今は触られても痛みを感じることはない。

感じるのはただ、気が遠くなるような快感だけだ。

ジルは頬を染めて喘ぐエアの手を取り、同じく大人の形をした、己の性器を握らせた。

「僕のも触って、エア」

「あっ…」

互いのを握ると、どちらのものも脈打ち、硬く大きくなる。

泡だらけの狭いバスタブの中で、二人は重なるように抱き合いながら、夢中で口づけを繰り返した。



「妖精王子の秘密」が単なる夢でなく本当だったとすれば、
お互いに慰め合うようになったのは中等部からってことなんですが、
小さいころからいちゃいちゃしている二人ですから
絶対それ以前からさわりっこしているとおもうんです…
少なくともエアの皮をむいたのはジルだって信じてる…!

妖精部屋