おしおき
「おいエア、いい加減、機嫌直せよ」 寮の自室のベッドの上に体育座りして、膝に顔を埋めているピンクの髪のシルフに、トォルはうんざりした顔で声をかけた。 「もとはと言えば、おまえたちがいちゃいちゃしてたのが悪いんだろうが」 双子がいない、とおもってニィルと一緒に探していたら、二人はなんと廊下の端で抱き合っていた。 怒ったニィルがその場でトォルにキスして、立ち去ろうとしたニィルをジルが捕まえて、 抱きしめながら「おしおきだよ」と言ったのだ。 「兄ちゃんにおしおきされんのが、そんなにうらやましいかよ?」 「うるせー」 いらだった声が、折り曲げた身体から聞こえた。 「だって…ジルは俺のなのに…」 すんと鼻を鳴らしながら、エアは涙声で目のあたりをこする。 滝のように流れるピンクの髪の間からのぞく、透き通った色のうなじが、細かく震えていた。 トォルはポケットに手を突っ込み、エアのために持ち歩いているチョコを取り出そうとした。 この世でジルの次にチョコが好きだ、というくらい、エアはチョコに目がない。 どんなに機嫌を損ねていても、チョコを食べている時だけは笑顔になる。 だがそこでふと、トォルは思いとどまる。 (いやでも待て。こうやっていつも甘やかすから、こいつはいつまでも反省しないんじゃないのか?) 兄を想って泣くエアの姿はいじらしくてかわいいと思うが、エアの恋人はこの自分なのだ。 なのに、あてつけとはいえ、ニィルにキスされた自分は放置で、ジルのことでいじけるとは何事だ。 たまにはきつく言ってやらないと。 トォルは深く息を吸い込んだ。 「エア、てめー、いいかげんにしろよ!そんなにおしおきされたいなら俺がしてやるっ。 二度と俺の前でジルのことなんか考えられないようにしてやるからな!」 うずくまっていた身体がぴくっと動いた。 ついたんかをきってみたものの、それは無理かも、とトォルは思う。 なにしろエアのブラコンは年季が入りすぎている。 いつかはエアの心を自分でいっぱいにしたいと思うが、それにはもっともっと時間が必要だ。 ところが、エアはゆっくり顔を上げると、顔にかかるピンクの髪をかきあげながら、泣きはらした目でこちらを向いた。 「いいぜ」 「えっ」 「俺におしおきすんだろ。早くしろよ」 エアはベッドに横たわり、はだけたシャツを、最後のボタンまで外した。 透き通るような、艶めかしいシルフの肌が露わになる。 ベッドのかたわらで、トォルは首まで真っ赤にして立ち尽くした。 エアの裸など毎晩見ているはずなのに、目にする度にどきどきしてしまう。 「エアは存在自体が誘ってるからね」と以前ジルが言っていたが、 彼が無自覚に垂れ流すお誘いオーラは、凶器に等しい。 自分の魅力を利用しているところがあるジルよりも、ある意味、よほど性質(たち)が悪かった。 「何だよ。やらねーのかよ」 目元を赤く染め、拗ねたような顔でじっとりとこちらを睨み上げる夕暮れ色の瞳に吸い込まれるように、 トォルは横たわるエアの上にのしかかった。 「んっ…」 トォルにしては乱暴に唇を塞ぎ、舌を差し入れると、迎え出た舌に引きずり込まれた。 深く激しい口づけに、仕掛けたトォルの息の方が先に上がる。 「…こんなのが、お前のおしおきなのか?」 口づけの合間に、エアがたずねる。だが彼の夕暮れ色の瞳も熱く潤み、濡れた唇から漏れた言葉は甘くかすれていた。 「うるせー、泣かせてやる」 そう言うと、トォルはむき出しになった綺麗なピンク色の乳首に吸い付いた。 「あ、んっ」 エアがここの愛撫に弱いのはもう知っている。口の中でみるみる硬く大きくなる果実に歯を立ながら、 もう片方の実を痛いくらいにぎゅっとつまんだ。 「ぁっ…ぁあんっ…」 さっきまで憎まれ口をきいていたエアが、切なげな表情で喘いでいる。 トォルはエアの色っぽい表情を注視しながら、唇と指を使って、つんと立ち上がった両方の乳首を、交互に愛撫した。 おとなしくなったエアの制服のズボンを、トランクスごと脱がせ、すでに半勃ちになっているそこを口に含んだ。 途端に甘い悲鳴が上がり、長い両脚がびくりと跳ねる。 さすがに全部は口に入らないから、先端の方だけ咥えて、根元の方は手で扱いてやる。 すでに蜜がにじんでいる先端を、花の蜜を吸いだすように何度も吸ってやると、 エアはいやらしい顔で甘く喘ぎながら、ビクビクと身体を震わせ、腰を揺らめかせてトォルの口内に蜜を放った。 荒い息をつきながら、乱れたピンクの髪を気だるげにかきあげる動作がやけに艶めかしくて、 トォルの鼓動も激しく鳴っている。 ところで、そんなエアの姿にすっかり反応してしまっている自分をどうしようか。 と考えている間に、トォルの身体がぐるりと反転した。 見えるのは部屋の天井と、艶っぽい表情をしたピンクの髪のシルフ。 一瞬の間にトォルは組み敷かれ、両手をばんざいの形に押さえつけられていた。 「…そういや、俺もお前におしおきしねーとな。目の前でニィルとキスしやがって」 夕暮れ色の瞳が物騒に光り、トォルはさっと蒼ざめた。 あれはニィルが、と言い訳する前に、その口を乱暴に塞がれた。 頬にかかるピンクの髪からは、甘いベリーの香りがした。
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