アカギSS (All 18禁)

夜明け前 

夜明け前の空は暗い。月はもうとっくに窓の外へと沈んでいる。


暗闇の中、カリンツは重く気だるい身体を起こし、闇に沈んだ広い床を見回した。
服が見当たらない。報告の後、いつの間にかあの見かけによらず力強い腕に絡め取られ、
いつのまにか全て脱がされて、このベッドの中で喘がされていた。
身体じゅうに、まだその時の甘く痺れるような感覚が残っている。
数時間前までの己の痴態を思い出し、カリンツは一人羞恥に頬を染めた。
もう何度も繰り返してる行為なのに、この男に触れられる度に我を忘れてしまう。
服を脱がされたことにも気づかないなんて。

恥ずかしい回想を振り払うように頭を振り、服を探すのは後にして、とりあえず背中に流れる髪を結いあげることにした。羽飾りのついた髪留めはすぐに見つかった。アグレイアンはいつもカリンツをベッドに横たえる前に、髪留めを外してベッドサイドのテーブルに置いている。
手ぐしで長い髪を上げて髪を留めている背中に、声がかかった。

「随分と忙しないな。ほとんど寝ていないだろう」

振り向くと、カリンツを寝させなかった張本人が、やわらかいベッドの上で頬杖をついて横たわっていた。カリンツ同様、一糸まとわぬ姿だが、芸術家の手による彫刻のような見事な体躯で、普段着痩せする身体には実はしっかりと筋肉がついている。

この男の身体に、抱かれたのだ。その気になれば男のカリンツを身動きできないように組み敷いてしまえる、強靭な身体だ。

まるでカリンツが起き出したときからずっと見ていたような様子のアグレイアンに、カリンツは生真面目な表情で答えた。

「夜が明けるまでに戻ります。俺がいないとあいつら」

すぐさぼるから、という言葉は上官の手前、かろうじて呑みこんだ。
帰ってくると見張りは慌てた顔をして出迎えるし、その足で修練場に出向けば皆いつも以上に熱心に練習している様子を見せるが、カリンツにはわかる。彼らは自分がいない朝は絶対、いつもより遅くまで寝ているのだ。以前、今と同じようにアグレイアンに引き留められて昼過ぎに帰ってきた時、皆そしらぬ顔をしていたものの、とても朝早くから起きて鍛錬を続けていたようには見えなかった。

隊をまとめるのは隊長である自分の責任だ。自分が不在の間に規律が緩むのは一概に隊員だけを責められない。だから頭ごなしにお前らさぼっていただろうなどとは怒れないのだが、それだけに、なるべく本部を空けたくないのだ。

呑み込まれた言葉を読み取ったかのように、アグレイアンはくすりと笑った。

「まるで我が子を心配する母親だな。どうせ普段しごいているのだろう、月に一度くらいは羽根を伸ばさせてやったらどうだ?」

「先週もここに来たと思いますが」

カリンツはむっつりと反論した。最近、呼び出される回数が増えたのは気のせいではないはずだ。
頑なな横顔に、呼び出した張本人はしょうがないなと苦笑交じりのため息をついた。

「今度は私から出向こうか。そうすれば君が遠く離れた仲間のことで気をもむこともないし、私がそんな君を見て妬くこともなくなる」

「何を…あっ…」

背中から抱きすくめられ、先刻さんざんもてあそばれた胸の突起を指でつままれて、カリンツは続ける言葉を失った。髪を結ったことで露わになった耳の後ろを強く吸われ、未だ快楽を忘れられない身体がびくりと跳ねた。

「次からはそうするから…今朝はゆっくり寝かせてやれ…」
「あ…ん…将軍…」

そういうわけにはいかないと理性は訴えるが、耳朶を甘噛みされ、あさましく反応を始めた中心を掌に包まれてしまってはもう抵抗できなかった。

色合いの違う銀糸がベッドの上で絡み合う前に、羽飾りのついた髪留めは再び外され、テーブルの上に置かれることになった。

おわり