最終話
夢の中で、誰かに抱きしめられていた。 薬が見せた、唯一幸福な幻覚だった。
「・・・ここはどこだ」 じっと天井を見ていた高耶が、ふと呟いた。 返事は長いことなかった。聞こえなかったのかと非難の目を近くの気配に向けると、 「母の部屋です」 不思議そうに尋ねる高耶に、直江は頷く。 「ええ。もっとも、母がこの部屋に入ったことは一度もありませんでしたが・・・」 すでに何人もいる妃たちの一人として後宮に入ることを、直江の母は拒んだ。 ハマドが彼女をどれだけ愛していたか、この部屋を見ればわかる。決して華美ではないが、 だが高耶は不快気に眉を寄せる。 「おまえの父親は妻を鉄格子の中に閉じ込める気だったのか」 高耶の言うとおり、大きな窓には銀色の格子がはまっていた。 「あれはあなたのためにつけさせたんですよ。元気になった途端ここから飛び立っていかないように」 高耶は髪を梳こうとする手を振り払い、睨みつける。 「あんなものでオレを閉じ込められると思っているのか」 痛いところを突かれて、ぐっと奥歯をかみ締める。 「ここにいなさい。ここにはあなたの好きな砂漠がある。 まぶたに、頬に触れた唇が、何か言いたげな唇にたどり着く。
「・・・おかえりなさい、高耶さん」
おわり |
えーと、ここで終わりの方がいいのかなーと思いつつ、次の話も考えているので続きます(笑)。
高耶さんがこのまま後宮に居つくとは思えないし(笑)。
周りが騒がしくなるまでは、しばらく鉄格子の中の蜜月(ぶはっ)が続きます。
今回裏がなかった分、次の冒頭はらぶらぶで!
感想くださった方々、ここまでおつきあいくださった方々、ありがとうございましたー!