やさしく攫って

 

ドォン!と凄まじい音がして、鉄のドアが吹っ飛んだ。

「おのれ、曲者!」

玄関に向かってバラバラと集まってくる憑依霊たちを片っ端からふっ飛ばす。
破壊された壁や天井から舞う粉塵の中で、直江信綱は鬼のような形相で真言を唱える。

「南無刀八毘沙門天――《調伏》!」

ここに来るまでにも、既に50体近くの怨霊どもを調伏してきた直江である。どこの者とも
わからない雑魚どもに高耶を攫われて完全に頭に血が上っている。いつもの依巫保護
の原則はどこへやら、手加減なく放たれる《念》のあおりをくらって頭などを打ちつける
人々には目もくれず、土足で廊下を突き進んでいく。
一番奥の襖を開けると、和服姿の老人が怯えたように後ずさった。

「ヒィィッ、誰かッ」
「あのひとはどこにいる」

地の底から這い出るような声だった。息も荒く、獰猛な目つきで迫る直江に、怨霊は
ひたすら助けを求めて辺りを見回す。直江は目を眇め、空中から取り出した徴縛鞭を
老人に振るった。

「ギャァァァ!!」
「どこにいるかと聞いているんだ」

そのままバラバラにひきちぎる勢いで締め上げる拷問に、怨霊はたまらず畳の下を
指差した。

「ここじゃ!上杉景虎はこの下に居るッ」
「…よく言った」

直江は冷たく微笑んだ。左手にまばゆい光源を生み出す。

「だが、人の主君の名を気安く呼ばないでもらおうか」

断末魔の悲鳴が響きわたった。


「高耶さん!」

依霊をいささか乱暴に脇にどけ、畳を上げると、貯蔵庫のような穴倉にガムテープで
口を塞がれ、両手両足を巻かれた高耶が横たわっていた。あきれたことに
この騒ぎの中ですやすやと眠っている。直江は脱力しながら、狭い穴倉から
豪胆な主君を抱き上げた。

 

「いで――ッ」

ものすごい力で口をひっぱられて、高耶は目を覚ました。

「畜生、何しやがる!?…って、あれ…?」
「おはようございます、高耶さん」

見なれぬ天井と、最近見慣れてきた男の顔が視界に入った。
それでも状況がわからず、目をしばたいた。

「ええと…ここは?」
「兄のマンションですよ。まったく…記憶も《力》も戻らないくせに、誘拐体質だけは
しっかり昔のままなんだから」

高耶の口を塞いでいたガムテープを丸めてごみ箱に放りながら直江は溜息をつく。
埃だらけのスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを引きぬいてハンガーにかけた。


「誘拐体質とは何だよ」
「そのまんまでしょう。これで何回拉致されたとおもうんです」

痛いところを突かれて、高耶はぐっとつまる。
だがそれを言うなら、ああいう変な奴らが高耶の身辺をうろつくようになったのも、
この男と出会ってからだ。それまでの自分はごく普通の、とは言えないが、霊だの
何だのとはまったく縁のない生活を送っていたのだ。
しかし言い返そうと開いた口は、そのまま男の唇に塞がれてしまった。

「…んっ…」
「――あまり心配させないでください…それこそ鎖に繋いで閉じ込めてしまいたくなる」

熱い瞳でかきくどかれて、高耶は反論する気勢をそがれてしまった。たまらずに目を
閉じると、もっと熱いくちづけが降ってきた。濡れた音を立てながら何度も唇を合わせる。
絡んでくる舌に応えながら直江の首に手を回そうとし――手首が未だ拘束されているのに
気がついた。

「おい――直江」
「あなたに飢えて死にそうなんです。後にしてください」
「ってこれ、取れよ!」

首筋に吸いついていた直江はようやく顔を上げるとああ、とこともなげに言った。

「たまにはこういうのも…いいでしょう?」

耳朶を噛みながら低い声で囁かれて、高耶は言葉を失った。こういうのは反則だ。
そう思いながらシャツの裾から忍び込んで来る指先に、いちいち反応してしまう。
乳首をこねくり回しながら口でボタンを外していく。露になった鎖骨に齧りついた。
大きな掌は滑らかな肌の感触を確かめるように胸から脇腹にかけて這い回る。

「ハ・・・ッ」
「どうしたの?いつもより感じてる」
「・・・ッ」

指摘されて、高耶の頬が羞恥に染まった。手首を拘束されているせいか、直江なのに
違う男に触られているみたいだった。禁忌を犯しているような昏い快感が高耶の身体を
侵食している。


脇腹の一番弱い部分を撫で上げられ、高耶は身を捩った。厚い掌はそのままジーパンの
中に潜り込んだ。

「アン…ッ」

思わず恥ずかしい声を上げてしまい、頬が熱くなる。半ば勃ち上がっていたソコは
男の手を待ちわびていたようにぐっと質量を増した。直江が口腔に含んだ乳首を
舌で転がすと、手の中のモノはびくびくと震えた。
ジーパンのボタンを外し、下着ごと抜き取った。外気に晒された分身をそのまま
咥えこむ。

「やッ…あああんっ…」

直接的な刺激に、高耶は溜まらないと首を振る。ざらりとした舌で亀頭の裏側を
舐め上げられ、若い身体が何度も跳ねる。先端を舌先でつついて先走りの液を
掬い採る。口腔全体で分身を吸い上げると、高耶は直江の名を呼びながら精を
放った。


荒い息をつく高耶の額にくちづけながら、中指でそっと後庭を探る。まだ余韻を
ひきずっているのか、指を入れても軽く眉を寄せただけだった。

「ココに入れるのはもう…こわくない…?」

慎重に指を動かしながら、直江が尋ねる。高耶は頬を染めたが、やがて恥ずかしそうに
頷いた。熱い内部を進む指は確実に弱点を攻め、高耶を内側から蕩けさせていく。
二本、三本と指が増やされていくにつれ、追い上げられた熱を持て余して淫らに
腰を揺らした。

なごり惜しげに吸い付いてくる内壁の感触を愉しみながら指を引きぬくと、猛りきった
己の怒張をあてがった。

「ハッ…ア…ァアアッ」

断続的に押し入ってくる肉棒の質量に、高耶は感じいった声を上げる。根元まで
収めきると、満足げなためいきをついた。

「なおえ…おおきい…」

快楽に熟れた瞳が直江を見つめる。十代の青年とは思えない妖艶さだ。
はしたない言葉さえ、男を狂わせる道具だった。

「・・・あなたがあんまり心配させるからですよ…」

瞼にくちづけながらゆっくりと動く。大きさを誇示するように先端まで引きぬいてはまた
奥まで押しこむ動作を繰り返す。

「ァッ…だって…おまえは、助けに来てくれるだろう…?」

快楽に顎を仰け反らせながら高耶は囁く。その信頼しきった、甘えるような響きに
直江は苦笑して両脚を抱えた。

「まったく…あまり甘やかすのも考えものですね…」

言うなり、激しく腰を使いだした。高耶が切れ切れに甘い悲鳴を上げる。嵐のように
内部をかきまわされる快感に自らもまた腰を使いだす。自分がどんな格好で男を
受け入れているかなんてもはや考える余裕はなかった。静かな室内に響きわたる
卑猥な濡れた音さえも感覚を煽るだけだった。

「ァ…イイ…イイッ…なおえ…っ」
「――くっ…高耶さん…っ!」

お互いの絶頂の時の声を聞きながら、二人は同時に放った。

 

「…今度は私があなたを誘拐しましょうか」

息が整った後、やさしく髪を梳きながら、直江が突拍子もないことを言った。
あれから手首を拘束したまま、獣の体勢でも愉しんだ二人である。ことに手を
縛ったままのバックは高耶のお気に召したらしく、バックだけで3ラウンド
やってしまった。

「?おまえがオレを誘拐してどうすんだよ」

案の上、高耶はわからない。さすがに疲れきって閉じかけたまなこで怪訝そうに
直江を見る。
だが次の直江の言葉を聞いた瞬間、ねぼけまなこはかっと見開かれた。

「たまには変わった趣向もいいでしょう?どこか知らない場所に監禁して
犯してあげ・・・ぐぅっ 」

拘束を解かれた拳が急所にヒットし、直江はベッドの中に蹲った。

「おまえなんかおやじ狩りにあって身ぐるみ剥がされてろ!バカ!」

 

おわり


700カウントをげっとしてくださったMYさまに捧げます!ありがとうございました♪
しかしコレって甘々…甘々?(^_^;)ナンかハゲシクはきちがえているやうなvvv
しゅみません。今回のところはこれで・・・(逃)

小説部屋へ