「・・・今のおまえに何ができる」
スーツ姿の直江は、少し苦しげな表情をしている。召還の炎の影響を、直江もまた受けているのだろう。
本来毘沙門天の加護を受けているはずの直江のこの有様は、彼を着実に蝕んでいるものの存在を
明らかにしている。
突然松本に現れたわけを問うこともせず、ただ喉の奥から唸るような声で高耶は言った。
「今おまえがオレにしたいことは何だ?
真綿のような優しさでオレを包んで周囲の人間を遠ざけて、高価な人形みたいにガラスケースに
しまって大切にしてくれるつもりか?
違うだろう、直江。おまえが本当にしたいことはそんなことじゃなかったはずだ」
高耶は直江を見据えながら、白のカッターシャツを脱いだ。
日に焼けた、成熟しきってない若い雄の上半身が露になる。
「優しく包むような愛だけでは愛せなかった。気狂いじみたいやらしい言葉を毒のように注ぎ込みながら、
貪りつくすような激しさでオレを犯した。本気で犯り殺されそうな勢いにやめてくれと泣き喚いても許して
くれなかった。心も身体も奪って奪いつくす――おまえはそんな男だったはずだ」
立ち尽くす直江に、高耶は苛立った表情で眦をつりあげた。
ほどよく筋肉のついた胸の飾りを、自らの指で弄びはじめる。
愛撫に飢えた葡萄粒は少し刺激を与えるだけでみるみる硬く勃ちあがった。
「やめてください高耶さん!」
「こんな姿を見ても、もう何も感じないか。浅ましい姿にかえって興ざめか。だがあいにくオレは
聖人じゃない」
欲しいのは穏やかな優しい愛じゃない。精神的な抱擁だけじゃもう満足できない。
おまえがオレをこんなにしたんだ。
高耶はジーンズの前をくつろげ、直江に向かって足を広げて自身を慰めだした。
顔は上気し、吐息は甘やかに乱れているが、潤んだ瞳は屈辱と怒りにぎらぎらし、まっすぐに直江を
見つめていた。
「来いよ、直江。おまえの中にあの野蛮で美しい炎がまだあるのなら。
オレの全てを手に入れたいと望んでいるのなら。
それとも、もうオレに対する欲望なんてなくなっちまったのか・・・?」
服を乱して手淫を続けながら、煽るように見上げる高耶の瞳はひどく真摯だ。
炎が悲鳴を上げるようにうねりをあげる。
昏い炎の明かりが、直江の顔にちらちらと映っていた。
苦しげな表情で高耶の痴態を見つめていた直江は、やがてゆっくりと足を踏み出した。
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高耶さん、ここ寺の境内・・・。
次回、裏です(^^;)