細い腕にひきよせられるように触れた唇は微かに震えていた。
だが、ちいさな唇は未知の行為に対する恐怖を押し隠すように大胆に桃城の唇を求める。
薄く唇を開いて桃城の舌を迎え入れることも、絡めてきた舌に応えることも、全て
桃城が教えたことだ。
つたないながらも一生懸命愛撫についていこうとする様子がいとおしくて。
まだ微かに震えている指先をにぎりしめた。
「大丈夫。おまえが嫌がることはしねぇよ」
唇と指で越前の快楽のありか場所を探りながら、まだ雄とは言えない、しかし
確かに同性の身体に欲望を感じている自分に軽い驚きをおぼえた。
初めて夢に越前が出てきた時、自分はおかしいんじゃないかとおもった。
確かに越前とは一緒にいて飽きないし、テニスでは油断のならない奴だし、
生意気だけど目が離せないところもあるけれど・・・でも、男だ。
明るくて話好きな可愛い女の子が好みの桃城にしてみれば、いくら小さいからって
野郎を好きになるなんて悪趣味じゃないかとおもう。
それでも。
こうして肌を触れ合わせてなお、この腕の中の存在が他の誰よりも可愛い。
桃城の愛撫のひとつひとつにちいさな反応を返す、
本当は恐いくせに、けっしてそれを口に出さずに、小刻みに震えながら
全身で自分を受け入れようとしがみついてくる存在がいとおしくてたまらない。
恋をしたのは初めてではないけれど、こんな風に誰かをおもったことは今までに
なかった。
「あ・・・や・・・ぁッ・・・」
愛撫に感じている「しるし」を口に含むと、越前の身体が跳ねた。あらぬところを
咥えられる羞恥に、すでに上気している頬がさらに赤く染まる。
「やだ・・・そんなとこ・・・ッ・・・ああッ」
身体を捩じらせて股間にある桃城の頭を離そうとするがびくともしない。
ざらざらとした熱い舌でくびれた部分を舐め上げられて、快感で頭がぼうっと
なってくる。
「あ・・・あっ・・・も・・・でちゃう・・・ッ」
限界を感じた越前はしきりに桃城の頭を離そうとするが、桃城は応じない。
どころか、イけよ、とばかりに口内の分身を舌できつく扱き出す。
「ッ・・・桃せんぱ――!」
ぶるっと震えながら欲望を吐き出す。その精を飲みながら、桃城は初めて
越前が達する瞬間の表情を見た。羞恥と快楽に染まった、自分だけが知る
越前の「素顔」――
めまいがした。
「――絶対誰にも渡さねーから」
「なに・・・ぁッ・・・」
問い返す余裕も与えず身体を返し、双丘を両手で割り広げると、奥まった
場所に舌を這わせた。
思いもかけない場所に濡れた感触を覚え、それが何であるかに気づいた越前は
こんどこそ激しく抵抗しだした。
「こら、暴れるなっ」
「やだっ、ヘンタイ!」
ヘンタイ・・・。かなり傷ついたが、ここで慣らさないと越前が傷つく。もがく両脚を
力づくで押さえつけ、硬い蕾がほぐすように舌を抜き差しする。何度もそれを繰り返して
いると、抗議の声はしだいに途切れがちになり、やがて甘い嬌声に変わった。
こんなところで感じるのが恥ずかしいのか、シーツに顔を埋めたきり何も言わない。
十分に潤った頃合いを見て指を一本差し入れる。入れたときに少しだけ苦しそうに
呻いた越前も、ゆっくりと抜き差しするうちに熱い吐息を漏らすようになった。頬を
上気させて切なげに眉を寄せる越前に暴走しそうになる自分を抑えながら、
思ったよりも狭い越前の中にあるはずの快感点を探す。
「――ッ!」
指の腹がある一点に触れたとき、越前がびくっと身体を跳ねさせた。ここか?と
同じ場所を擦ってやると、感じ入ったように淫らな声をあげた。
「や・・・そこ・・・やめ・・・ぁッ・・・ああん・・・」
弱点を攻められて蕩けきった身体は、二本目、三本目の指も難なく飲み込んだ。
抜き差しするたびにくちゅくちゅと濡れたいやらしい音が二人の耳に届く。知らず
荒くなっている二人の吐息、無意識に指の動きに合わせて揺れる越前の細腰に
桃城の欲望が限界を訴える。
「あ――!」
指が引き抜かれ、指とは比べ物にならない熱と質量をもった塊が押し入ってきて、
越前は大きく目を見開いた。本能的な恐怖に収縮する内部を押し広げるように
それは中に進入してくる。
「やっ・・・先輩・・・待っ」
「越前・・・力抜いてくれ・・・ッ」
指で感じるよりもはるかにきつい締めつけに桃城は眉を寄せる。だが越前の方も
恐慌に陥る寸前だ。桃城はとっさに越前の分身に手を伸ばした。
「は・・・ぁ・・・ッ」
前への刺激に力が抜けるのをみはからって身体を進める。全てを納めきった時、
桃城は越前の華奢な背中を抱きしめた。
「愛してる、越前」
「・・・」
「一生、大事にするから」
桃城の真摯な言葉を越前がどうおもったかはわからない。ただ、抱きしめてくる
大きな手をぎゅっと握りしめた。
お互いの両手を絡めたまま、ゆっくりと動き始める。内部を深く抉るたびにあがる
越前の濡れた声がうれしくて、動きは次第に激しくなっていく。
「ぁッ・・・ぁんっ・・・ぁんっ・・・はッ・・・」
後ろで快感を得ることを覚えた越前も、桃城の動きに合わせて淫らに腰を振る。
どちらもはじめて経験する快感に、他に何も考えられなくなる。
「先輩・・・桃先輩・・・もう・・・ッ」
「くっ・・・越前・・・!」
絡み合わせた二人の指にぐっと力がこもった。
放たれた相手の熱い精を感じながら堕ちていく――
「嘘つき」
後始末した後、服を着て抱き合って。行為の熱が過ぎ去った後で
越前から発された第一声がこれだった。
なぬ、と桃城が眉を上げて腕の中を見ると、越前はさっきまでの媚態は
どこへやら――いや、目元を少し赤くして桃城を睨んでいる。
「何が『おまえが嫌がることはしない』?オレ、何度もやだって言った」
「感じてたくせに・・・ぐはっ!てめっ」
「〜〜〜〜ッ!」
大事なところに無情な膝蹴りをくらって、桃城は涙目でうずくまる。
同時に、急に動いた越前も下肢に脳天を突くような痛みを覚えて身体を丸めた。
せまいベッドの上で同様に情けない格好をしているお互いの姿に、二人は
どちらからともなく、くすりと笑った。
「まあ・・・気が向いた時なら、またしてあげますよ、マッサージ」
越前はそういうと、甘えるように桃城の胸に顔をすりつけた。
おわり
裏越前屋へ
はあ、お疲れ様でした(^^;)
ってこの桃城君もしかして筆おろしっすか!?(爆)
なんだかしまらないおわりかたですが・・・また出直してきますってことで(逃)。
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