ハロウィン
「『トリック・オア・トリート』というのは、日本語で言えば『菓子をくれないならばイタズラをするぞ』という、ハロウィンの日に近所の家をたずねて言う、子供たちの決まり文句だ。菓子を与える家には何もせず、何も与えない家にはイタズラをしていいという風習だ」 はあ、とセナは目をまるくする。こういうイベントに無関心だとばかりおもっていた進が、ハロウィンについて解説しているのはなんだか不思議な感じだ。 「お前はトリックを選んだ。つまり俺にイタズラをしたいと望んでいるのだな」 え?と思うまもなくぐるりと視界が回り――いつの間にかセナは、ソファに寝そべった進に馬乗りになっていた。 「さあ――どんなイタズラをしてくれるんだ?」
自分から動くのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。 セナの唇と手のひらはしだいに下降して、わずかに震える手がとうとうスウェットのズボンにかかった。進が静かに見下ろしているのはわかっていたが、セナ自身の身体が、すでにこのままでは帰れない状態になっていた。 「もう・・・限界だ、セナッ」 進の手がセナを引き離そうとしたが、セナはやめなかった。口の中でびくびくと震える進の分身を、想いをこめてひときわ強く吸い上げた。 「くっ・・・!」 理性を手放した進が口腔に放った体液を、セナはごくりと飲み込んだ。 「あ・・・」 セナの顔が羞恥で真っ赤に染まる。 「どうした、続けないのか?」 進の言葉の調子に揶揄はなかったが、セナはいたたまれなかった。 「お前のしたいようにすればいい」 進はそういうが、セナが今したいことは、進にされたいことだ。だが進は動いてくれない。 「進さんが・・・欲しいです・・・っ」 進の上に馬乗りになったまま、ぱたぱたと涙をこぼすセナの頭をひと撫ですると、進はセナの細い指を手に取り、己の唇へと導いた。 「あ・・・ッ」 進の手に操られているとはいえ、自分の指が、今までふれたことがない秘部をさわっている。 「あ・・・あ、んっ・・・」 自分の指なのに、内部は歓んで締め付けてくる。進の手が導くまま、そのまま指を抜き差しすると、背筋に電流が走るような快感が伝わった。 「あっ・・・あっ・・・」 進の目の前で自慰をしているような状況に、セナは羞恥で消え入りそうになりながらも、心の奥底で別の興奮を覚えていた。 (進さんにこんないやらしい僕をみられている・・・) そして指では物足りなくなると、セナは屹立した進自身をほぐれた蕾にあてがい、自分の中に少しずつ埋めていった。 「進さん・・・」 どう動いていいのかわからず、すがるような目をむけるセナの腰を、進の手がつかんで誘導する。教えられるままに、屹立したセナ自身を進の腹にすりつけるように動くと、セナの中の進自身もまた大きさを増して脈打ち始めた。 「あっ・・あっ・・・あっ・・あっ・・・」 リズミカルに腰を動かすセナの顎から進の胸へと汗が滴り落ちる。いつも以上に奔放に腰を振るセナの狂態を、進は目を細めてみていた。そしてそれまで自ら動かさなかった腰を、セナの動きに合わせて動かし始める。 「あんっ、あんっ、あんっ」 進も動いたことでより接合が深くなり、セナの嬌声もひときわ高くなった。律動は次第に速くなり、そして、 「ア、ンッ――」 二人は同時に欲望の証を吐き出したのだった。
嵐のような熱情が去った後、放心状態のままシャワーで洗われ、ベッドに運ばれたセナは、そのまま布団をかぶって進に背を向けてしまった。 「・・・・もー来年のハロウィンは絶対、ここには来ません」 何故そんなことを言うのかわからんという様子の進をぽかぽか殴りたい気分だったが、今は力が抜けて指一本動かせない。 「それは無理な話だと思うが」 え? 「来年はお前もここに住んでいるだろう?」 布団の中でセナは目を丸くし――力が入らない身体をなんとか首だけ動かして、ベッドの端に腰掛けている進を見上げた。 「高校を卒業したら、一緒に暮らして欲しい」 そりゃあ、進さんがここに住み始めたときから、なんとなくそれは考えていたけれど。 なんて反則。 ・・・などと、心の中で文句を言いながらも、セナは力の入らない身体でなんとかもぞもぞと向きをかえて。
おわり |