ハロウィン
「『トリック・オア・トリート』というのは、日本語で言えば『菓子をくれないならばイタズラをするぞ』という、ハロウィンの日に近所の家をたずねて言う、子供たちの決まり文句だ。菓子を与える家には何もせず、何も与えない家にはイタズラをしていいという風習だ」 はあ、とセナは目をまるくする。こういうイベントに無関心だとばかりおもっていた進が、ハロウィンについて解説しているのはなんだか不思議な感じだ。 「お前はトリートを選んだ。つまり俺に菓子を与えてほしいと望んだことになる」 ああそうか、とセナは首をめぐらせ、テーブルの上のクッキーの食べかすとココアを見て、心持ちほっとした。とりあえずここに来た目的は、知らないうちに達成できたわけだ。 「クッキー、ごちそうさまでした。それじゃあ僕、帰りま――」 こんどこそ進の膝から降りようとしたのだが、先程からセナの腕をとらえていた手は緩まなかった。 「進さん?」 ええ!?と思うまもなく軽々と抱き上げられ――いつの間にかセナは、隣の寝室のダブルベッドの上で進に組み敷かれていた。 「あああのっ、僕、お菓子で十分ですからっ」
「アッ・・・アン・・・そこっ・・・やめ・・・」 裸に向かれてから一時間。進の愛撫はいつになく執拗だった。 「やめていいのか。ここはまだ物足りないようだが」 獣のポーズをとらせて突き出させた小ぶりな尻たぶを両手でつかみ、露になった秘所を舌でつつくと、セナはまた鳴き声を上げた。 「やんっ・・・やだっ・・・そんなとこ、きたない・・・」 進は聞き入れようとしない。セナは恥ずかしがって決して言わないが、ここを舌で愛撫されるのが実は好きなことを、進は知っている。唇で入り口をはさんで吸うようにしてやると、セナは泣きながら感じ入った声を上げた。いつも以上に時間をかけてそこを舐めてやり、セナの涙も枯れる頃、ようやく無骨な指が中に入った。 「あん・・・ああんっ・・・進さ・・・」 もういいから、と涙の痕が残る顔が哀願する。 「もう・・・ほし・・・」 内部をかき回す指がぐりぐりとセナのポイントを押し、セナは甘い悲鳴をあげる。 「やっ・・・いじわる」 時折の、こうした羞恥をあおる行為が、決して嫌いではないことも進は知っている。 「し・・・しんさんの・・・お●ん●ん・・・」 これ以上ない真っ赤な顔をして、消え入りそうな声で口にした言葉を聞き取ると、進は指を引き抜き、己の怒張を熟れた蕾に突き立てた。 「あ――あああんっ!」 指とはまるで違う太さ、待ち望んでいた熱く脈打つ肉棒を身体いっぱいに感じて、セナはようやく与えられた充足感に甘いため息をついた。 「アッ・・・アッ、アッ、アンッ、アンッ!」 大きな両手がセナの細腰をつかみ、嵐のような律動がセナをゆさぶった。 「アンッ、アンッ、アンッ、アンッ」 進に揺さぶられて、セナはただ喘ぐことしかできない。進と繋がりあっている快感以外、もう何も考えられなくなる。 「ア、アア――ッ」 二人は同時に欲望の証を吐き出したのだった。
嵐のような熱情が去った後、放心状態のままシャワーで洗われ、再びベッドに運ばれたセナは、そのまま布団をかぶって進に背を向けてしまった。 「・・・・もー来年のハロウィンは絶対、ここには来ません」 いけしゃあしゃあとたずねる進の胸をぽかぽか殴りたい気分は山々だったが、あいにく今は力が抜けて指一本動かせない。 「それは無理な話だと思うが」 え? 「来年はお前もここに住んでいるだろう?」 布団の中でセナは目を丸くし――力が入らない身体をなんとか首だけ動かして、ベッドの端に腰掛けている進を見上げた。 「高校を卒業したら、一緒に暮らして欲しい」 そりゃあ、進さんがここに住み始めたときから、なんとなくそれは考えていたけれど。 なんて反則。 ・・・などと、心の中で文句を言いながらも、セナは力の入らない身体でなんとかもぞもぞと向きをかえて。
おわり |