凍て緩むその後
春を感じさせる暖かい外気を感じながら、薬鴆堂の縁側で久々に月見酒を楽しんでいたら、 突然身体が冷えているとか言われて、部屋に押し込まれた。 確かに上空はまだ冬の寒さを残しているが、人間の時よりも熱い血のせいで、真冬の風にも耐えられる。 ただ、まだ冷たい上空の風が病弱な鴆の身体に障りはしないかと思ったから、空での月見をためらっただけで。 「もう身体なら十分あったまってるって」 先刻まで酒を飲んでいたのだ。いつも以上に火照っているくらいだ。 「いや、まだ十分じゃねえ」 鴆はそう言うと、リクオから羽織を剥ぎ取り、褥に押し倒した。 何でそうなるのか、さっぱりわからずにいるリクオに鴆が覆いかぶさる。 無防備な唇を塞がれ、差し入れられてきた舌は酒の味がした。 さては酔っぱらってるのか、とも思ったが、口腔をまさぐる柔らかい熱と、 帯を解かれて重ねられた、男の身体が与える熱に、さっきの問答などどうでもよくなってしまった。 「あっ…」 耳朶を甘噛みされながら両方の乳首をつままれて、リクオは敷布を蹴って身をよじった。 耳の裏を強く吸われて、背筋に電流のような快感が走る。 唇と手は徐々に下に降りてきて、脇腹を撫でた手が腰骨に触れ、脚のつけ根を伝って内腿を這った。 指でいじられてすっかり敏感になっていた乳首を口に含まれた時、 リクオはたまらず、まだ一度も触れられていない分身を鴆のそれに擦りつけた。 すっかり硬くなった雄同士が、ぐりっと擦れあう。 あさましいことをしている自覚はあったが、そこへの刺激は止められなくて、恥ずかしくても腰を動かしてしまう。 先端からにじみ出た滴が互いを濡らして、擦れる度にぐちゅぐちゅといやらしい音を立てた。 鴆を見ないようにして腰を振るリクオの痴態に鴆の息も荒くなり、 大きな両手で白い脚をぐいと広げたかと思えば、次の瞬間鴆はリクオの分身を咥えていた。 「ああんっ…」 形のよいつま先がぴんと張った。 「や、め…っ、鴆ッ…」 身悶えし、鴆の頭に手をかけるが、引きはがすことはできなかった。 両脚の太腿は大きな手にがっちりと押さえられていて暴れることもできない。 飴のように舌でねぶられ、音を立てて吸われて、リクオは甘い悲鳴を上げながら、あっけなく達した。 息も整わないうちに身体を返され、がくがくする膝で獣の体勢をとらされて、双丘を両指で割り開かれた。 ぬるりと暖かい感触を入り口に感じて、リクオは焦った。 「あっ…そこは嫌だって…」 「嫌じゃねえだろ」 ざらりとした舌で舐められて、思わず恥ずかしい声を漏らしてしまう。 「恥ずかしいからさせねえだけで、口でされるの、結構好きだよな?」 もうこんなになってるし、と分身に触れられ、リクオの腰が揺れた。 先刻放ったばかりのそこは、すでに腹につくくらいに勃ち上がって、先端から透明な滴を垂らしている。 差し入れた舌で中を探られ、音を立てて入口をきつく吸われて、リクオは羞恥と快感で気が遠くなりそうだった。 せめて顔が見えないのが幸いと、きつく閉じた目の端から涙をこぼしながら耐えていると、ひやりとしたものが入り口に触れた。 薬液をつけた指が奥に入ってくる感覚にむしろほっとして、リクオは内部を広げる感覚に身をゆだねる。 長くて繊細な指は舌よりもはるか奥の方まで侵入して内壁を擦り立て、時折リクオのいいところを突いては声を上げさせた。 「あっ…鴆…もう」 欲しい、と小さな声で懇願すると、指の代わりに硬く太い切っ先が入ってきた。 「あっ…あぁぁんっ…!」 指で広げられた内部が、さらに押し開かれる。 裂けるのではないかと思うくらい、いっぱいに広げられた入り口は、薬液の滑りもあってか、難なく大きな昂ぶりを飲み込んでいく。 大きな手が腰骨を掴み、背後で鴆が動き出した。 はじめはゆっくりと、次第に追い上げるように激しく。 リクオは揺さぶられるまま、声を上げることしかできず。 ただ、突き上げられながら背中に押し当てられた唇が、背中の百鬼模様と毒の模様を重ねるように覆いかぶさってきた身体が、 そして中を穿ち続ける鴆自身が、とても熱くて、ほっとした。
「酒なんかよりよほど身体あったまったろ?」 「…」 リクオを清潔な襦袢にくるみ、銀の髪を撫でながら、鴆は上機嫌に聞いてきた。 もとより冷えなど感じていなかったのだが、それを今蒸し返すのも面倒くさい。 リクオは代わりに鴆の胸元に顔を埋めた。 「リクオ?」 縁側で二人、ゆっくりと月見酒が楽しめるのはいつになるのかと考えながら、リクオはうとうとと眠りについた。
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