木の下闇
コノシタヤミ



鞍馬での修行を終えたリクオは、鴆と鞍馬の天狗たちを伴って伏見稲荷に戻った。
捕らわれているつららのことを思えば一刻も早く相克寺に向かいたいところではあるが、その前に伏目稲荷と相克寺の間にある4つの封印を再び施し、ばらばらに散った百鬼を回収しながら向かわねばならない。
リクオを慕って集まって来た百鬼を置いていくわけにもいかず、戦闘にいるリクオと天狗たちと百鬼たちの間が離れれば、彼らが追いつくのを待って小休止を取ることもやむを得なかった。


険しい山道で、何度目かの小休止を取っていた時、リクオは突然、背後から腕を取られ、ものすごい力で森の中に引きずり込まれた。

「!ぜ・・・」

「ったく、容赦なく置いていきやがって」

驚きに大きく見開いた目に映ったものは、はるか後方にいるはずの鴆だった。
もともと体力のない鴆は、鞍馬での鬼纏で力を使い果たしてしまい、戦闘はおろか、先を急ぐリクオや天狗たちについていくことすら困難だった。
だから、伏目稲荷を出る時に、無理をせず後から来るように言っておいたのだが。
自分を置いてさっさと先に行くリクオに、不満を募らせていたらしい。

「仕方ねぇだろ。早く行かねーとつららが」

「うるせえ」

リクオの言葉の何が気に障ったのか、鴆は緑の瞳を物騒に光らせて、その身体を乱暴に抱き寄せ、唇を塞いだ。





「ぁあんっ…!」


太い木の幹に手をつかされ、立ったまま、前戯もそこそこに貫かれて、リクオの口から甘い悲鳴が押し出された。
潤滑剤は塗られているものの、ろくに馴らされていない内部に、いつになく大きく堅い肉棒をねじ込まれて、その熱と圧迫感に、心も体も悲鳴を上げた。
同時に、そこを貫かれて快感を覚えていることもまた確かだった。

「大声出すと誰かが来るかもしれないぜ?」

リクオをこんな身体にした男は、耳朶を噛みながら意地悪く囁く。

「奴らどんなカオをするかねえ・・・自分たちの大将が、すぐ近くの木陰で、こんな淫らなコトしていると知ったら」

しかも相手はあんたの下僕だぜ?

ひどい男は得意げに喉の奥で笑って、大きな手で浮き出た腰骨を力強く掴み、激しく腰を打ち付ける。
動く度に結合部からは、さまざまな液が混ざり合ういやらしい水音と、肉を打ち付ける乾いた音が途切れることなく聞こえてくる。
ぬめる肉棒が内部を擦りたてられる気持ちよさに何も考えられなくなって。
先端が弱点を抉るように擦る度に訳がわからなくなって。
おまけに、いつ誰が見に来るかわからないこんな場所で、立ったまま後ろから貫かれていることが、たまらなく恥ずかしくて、それで余計に興奮している自分もまた、恥ずかしかった。
いくら声を押さえたところで、リクオがいつも以上に感じていることは、鴆にはお見通しだろう。
着衣のまま、下帯すら取らずに後ろから攻めたてながら、あわせから手を差し入れ、乳首と分身も同時にいじってくる。

「あっ…あんっ…鴆…ッ」

すごく気持ちよくて、もっとして欲しくて、でも言葉にはできずに、ただ、中で暴れている鴆を締めつける。

「リクオ…ッ」

熱にかすれた鴆の声が、荒い息と共に耳をくすぐった。
この状況に、いつも以上に興奮しているのはリクオだけではなかった。

リクオの状態を察してか、鴆が穿つ速度を速めた。
すでに蕩けそうな内部をさらに擦りたてられ、リクオの唇から切なげな嬌声が漏れる。

激しい抽送に二つの荒い息がこれ以上ないほどに忙しなくなって、絶頂へと駆け上る、その直前。

「あっ…中に…ッ」

出すなと言いかけた時にはもう遅かった。

この時にだけ聞くことができる、低い呻き声がすると同時に、奥に熱いものを出されて広がるのを感じた。
その感覚に身震いする身体を、細いくせに力強い腕が抱きしめる。




繋がりを解くと、いろいろなものが混ざり合った液体がとろりとあふれ出て、長着に隠れた白い内腿を濡らした。

「…どういうつもりだ」

正面から抱きしめられたリクオは、まだ息が整わぬまま、憮然と文句を言った。
部屋の中ならともかく、水も手拭いも着替えもない山の中で、どうやって後始末をしろというのだ。
後先考えずに中に出しやがって、と睨むリクオに、鴆は涼しい顔で言ってのけた。

「別に必要ねえだろ?オレを置いて先に行くってんなら、せめてオレの痕を連れて行け」

つまり、鴆の欲望を腹に残したまま行けということか。

「このっ…」

顔を真っ赤にして怒るリクオに鴆は小さく笑い、形の良い鼻の頭に、許しを請うように口づけた。



おわり


表の説明文(隣に来るかい?)とはなんか違いますが・・・;

裏越前屋