木の下闇
コノシタヤミ
鞍馬での修行を終えたリクオは、鴆と鞍馬の天狗たちを伴って伏見稲荷に戻った。
険しい山道で、何度目かの小休止を取っていた時、リクオは突然、背後から腕を取られ、ものすごい力で森の中に引きずり込まれた。 「!ぜ・・・」 「ったく、容赦なく置いていきやがって」 驚きに大きく見開いた目に映ったものは、はるか後方にいるはずの鴆だった。 「仕方ねぇだろ。早く行かねーとつららが」 「うるせえ」 リクオの言葉の何が気に障ったのか、鴆は緑の瞳を物騒に光らせて、その身体を乱暴に抱き寄せ、唇を塞いだ。
「ぁあんっ…!」
太い木の幹に手をつかされ、立ったまま、前戯もそこそこに貫かれて、リクオの口から甘い悲鳴が押し出された。 「大声出すと誰かが来るかもしれないぜ?」 リクオをこんな身体にした男は、耳朶を噛みながら意地悪く囁く。 「奴らどんなカオをするかねえ・・・自分たちの大将が、すぐ近くの木陰で、こんな淫らなコトしていると知ったら」 しかも相手はあんたの下僕だぜ? ひどい男は得意げに喉の奥で笑って、大きな手で浮き出た腰骨を力強く掴み、激しく腰を打ち付ける。 「あっ…あんっ…鴆…ッ」 すごく気持ちよくて、もっとして欲しくて、でも言葉にはできずに、ただ、中で暴れている鴆を締めつける。 「リクオ…ッ」 熱にかすれた鴆の声が、荒い息と共に耳をくすぐった。 リクオの状態を察してか、鴆が穿つ速度を速めた。 激しい抽送に二つの荒い息がこれ以上ないほどに忙しなくなって、絶頂へと駆け上る、その直前。 「あっ…中に…ッ」 出すなと言いかけた時にはもう遅かった。 この時にだけ聞くことができる、低い呻き声がすると同時に、奥に熱いものを出されて広がるのを感じた。
繋がりを解くと、いろいろなものが混ざり合った液体がとろりとあふれ出て、長着に隠れた白い内腿を濡らした。 「…どういうつもりだ」 正面から抱きしめられたリクオは、まだ息が整わぬまま、憮然と文句を言った。 「別に必要ねえだろ?オレを置いて先に行くってんなら、せめてオレの痕を連れて行け」 つまり、鴆の欲望を腹に残したまま行けということか。 「このっ…」 顔を真っ赤にして怒るリクオに鴆は小さく笑い、形の良い鼻の頭に、許しを請うように口づけた。
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