佐保姫その後
春の匂いを含んだ暖かい空気に誘われたのか、それとも夜桜に囲まれながら酌み交わす酒に酔ったのか。 鴆が知る「とっておきの場所」で花見酒を楽しんでいた二人は、いつしか酒よりも口づけに夢中になっていた。 「んっ…」 舌が口腔をまさぐる感覚に恍惚としているうちに、羽織と長着を脱がされ、 白い襦袢一枚で、太い木の幹に背中を押し付けられた。 「誰か来たら…」 「山奥だし、誰も来ねえよ」 こんな格好で外で睦み合うのはさすがに抵抗がある。 だが鴆は聞き入れず、自分は羽織を落としただけの格好でリクオの首筋に顔を埋めていた。 大きな手が襦袢の裾を割り、股間を下帯ごと握りこむ。 「ぁっ…」 砕けそうになる腰はもう一方の腕で支えられ、喘ぎ声は唇に吸い取られた。 すでに口づけだけで反応して、下帯を押し上げていた分身は、揉みこまれると布地の間で秘めやかな水音を立てた。 濃厚な口づけを受けながら、下帯を濡らしていく感触に頬が熱くなる。 逃れるように腰を捩ろうとしても許されず、 もどかしい愛撫を与えていた手はやがて下帯の中に忍び込んだ。 直に絡みついてきた指に欲しかった刺激を与えられて、リクオは掠れた悲鳴を上げながら、柔らかい布地の中に精を放った。 「汚しちまったな…替えはねえし、ここ、何もつけねえで帰らねえとな…?」 下帯を汚すように仕向けた張本人は、濡れた分身を弄りながら耳朶を噛み、意地悪い声で囁いた。 何もつけぬまま歩いて、蛇妖怪に乗って帰る――鴆以外の誰かに見られるわけでもないが、 それはひどくはしたないことのように思えて、リクオは鴆の肩口にしがみ付き、顔を埋めた。 不埒な手は、羞恥と期待に再び脈打ちはじめる雄を、解いた下帯で拭い、 続いて冷たい薬液をつけた指が、奥まった部分に忍び込んできた。 「んんっ…」 立ったまましているせいか、いつもより強引に指が入ってくる感覚に、リクオは耐えた。 分身を刺激されている間に愛撫を待ちわびていたその場所では、異物感もまた快感になる。 性急に内部を押し開く指の動きにいいように喘がされた後、身体を返されて、 太い幹にしがみつく格好で後ろから貫かれた。 「あっ…ああんっ…!」 襦袢の裾を腰までめくりあげられ、あらわになった尻を突き出した格好で、鴆の剛直を飲み込んでいく。 狭い内壁を押し広げるように侵入してくる肉棒は、いつもより大きく、硬く脈打っていた。 奥までずぶりと沈められ、落ち着く間もなく動き始めた時、背筋に電流が走った。 いつもより大きく感じるそれに擦られるたび、リクオの声から甘い嬌声が迸る。 「いつもよりすげえな…外だから感じてんのか?」 あんた、実はこういうの、結構好きだろ? 突き上げながら、いつの間にか再び濡れそぼっていた分身に手を添え、鴆が耳元で低い声で囁いた。 「んなこと…てめえこそ…っ」 リクオは羞恥から逃れるように、硬く目をつぶった。 変わった趣向でやりたがるのは鴆の方だ。 そう思うのに、目をつぶった拍子に、中にいる鴆を締め付けてしまう。 いつも以上に熱くなっている内部で、鴆は興奮して脈打ち、さらにリクオの中を押し広げようとしていた。 欲望を露わにした荒い息と共に首筋を舐められて、背筋がぞくりと震える。 分身と後孔への愛撫に加えて、いつの間にか、あわせから忍び込んできた指に乳首までつままれ、リクオはもう何も考えられなくなった。 「あんっ、ぁあんっ、鴆っ…」 「リクオッ…」 いつも以上に熱い身体をさらに熱い肉棒で飽くことなく穿たれ、蕩けさせられて。 激しい抽挿の末に最奥に熱を注ぎ込まれ、リクオもまた、鴆の掌に己の欲望を吐き出した。 |
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