Dirty & Sweet

 

 

 

部屋に着くなり、ベッドに押し倒された。

お世辞にも片付いているとは言えない床で、散らばったCDだかMDが
足元で不吉な音を立てたが、それに気をとられている余裕はなかった。

「・・・ッ」

噛み付くようにくちづけられたまま、桃城は目を見開く。いつもは
こっちが仕掛けてもするりと逃げてしまう気分屋が、桃城の胸に
乗り上げて桃城の口腔を小さく滑らかな舌で貪っていた。舌を絡ませ
歯列をなぞるやり方まで全てが桃城が教え込んだものなのに、
頭をなでてやる余裕すら与えない。情熱的の域をこえて息苦しい
キスに、反対に桃城のほうが溺れそうだ。

熱く湿った音を立てながら、越前の手が桃城のシャツにかかる。
ブツッと音がしてボタンがいくつもはじけとんだ。越前は頓着せずに
力任せにシャツを引っ張る。

「・・・おい」
「別にいいじゃん、つけなおせば」

お気に入りのシャツへのあまりの仕打ちに対する抗議を、
越前は首筋に舌を這わせながらこともなげに切り捨てた。
手は鍛え上げられた身体じゅうを這い回り、後を追う唇ははりのある
肌をきつく吸い上げ、鬱血と噛み跡を残していく。甘噛みにしては
ずいぶんと手加減のないそれは、痛みと同時に奥底から熾火のような
快感を引きずり出す。

越前は上半身を攻めながら密着させた腰をこすりつけるように動かした。
布越しにすでに硬くなっているお互いのものがぐりぐりと擦れあい、
もどかしい刺激に桃城のあごがあがる。細腰に回そうとした桃城の手を
振り払って、越前の頭はさらに下に向かう。

へそのあたりでもぞもぞと動かれるくすぐったさと、何か硬いものが
触れ合う音に何をしているのかと頭を起こして見れば、ジーパンのボタンを
外してジッパーを口にくわえたままこちらを見上げている大きな目と目が
合った。

「どうしたんだよ?おまえ」

積極的なのはうれしいが、素直に喜んでいい雰囲気ではない。氷帝戦が
終わってからこいつはずっと不機嫌そうだった。かとおもえば、オフに
どこにいくかともちかけたらあっさり「桃先輩の部屋でいいっすよ」なんて
ぬかしやがった。いつもなら真っ先に部屋に誘おうものなら
「頭ん中それしかないんすか?」って冷たい目で見るくせに。

睨むような上目遣いの目で桃城をじっとみつめながら、越前は口にくわえた
ジッパーを下ろす。前をくつろげて出てきたものにかぶりつかれて、桃城は
低く呻いた。

「ッ、こら、歯を立てるなって!」

小さな頭を抑えて抗議するが、越前は聞いてない。狭い口腔に包まれて
いつもより反応が早い自身がさらに大きくなるのを覚えた。

限界を感じて越前の頭を離そうとするが、離れようとしない。それどころか
いっそうきつく先端を吸い上げてきたので桃城は観念して目をつぶった。
ドクン、といっそう大きな鼓動と同時に張り詰めたそれが開放される。
越前は小さく喉を鳴らして桃城のエキスを飲み干すと、身体を起こして
桃城の顔に自分の顔を近づけた。
口はしに精液をつけたまま、越前はニッと笑った。

「今日は・・・あんたのここが空になるまで搾り取ってやるから」

急所を鷲掴みにされて桃城の息が止まる。越前の変貌ぶりに未だに
ついていけない桃城をよそに、越前は桃城の指を一本、また一本と
舐めしゃぶった。分身を咥えているかのような艶を帯びた表情と
舌使いに、桃城の息は再び荒くなる。先刻開放されたばかりのそこも
はやくもどくどくと脈打ちはじめていた。

「んっ・・・」

桃城の手を掴んで唾液で濡らした指を自ら秘奥へ差し入れる。異物感に
顔をしかめながらも貪欲に奥へと取り込んでいく越前の表情を桃城は
食い入るように見つめていた。行為を知っている内壁は桃城の指を
歓迎するように収縮する。指の動きに力を加えると、越前は小さく喘いで
喉を鳴らした。

三本指を入れて、自分の上でおしげもなく嬌態をさらす越前に桃城が
我慢できなくなった時、越前は桃城のジーパンを下着ごと引きおろし、
すっかり張り詰めてそりかえっているものの上にまたがった。

「あ――んん・・・っ」

挿入の時の越前の表情はいつだってそそるが、この時はまた格別だった。
顎をのけぞらせて薄く口を開いて、自ら受け入れているモノに対して
恍惚とした表情を隠しもしない。2,3度腰をゆすって桃城自身を収めると、
待ちわびたように腰を動かし始めた。

「あっ・・・アン・・・アンッ・・・アッ・・・」

奔放に腰を振りながら、大胆に開いた足の間からのぞく、男を出入りさせている
ソコも、先端から透明な液をはしたなく流している越前の分身も、うすく色づいた
ぴんと立った乳首も、あますところなく桃城に晒している。桃城を咥えている
狭い内部も出て行こうとする度にきつく締め付けられ、何度もせまりくる射精感に
桃城はぐっと力をこめてこらえなければならなかった。
だが今日の越前はそれをゆるさない。別人のような嬌態とあられもない声で
桃城の理性をあっというまに霞ませてしまう。

「んっ・・・うんっ・・・桃、先輩・・・ッ」
「ッ、越前・・・ッ」

いっそうきつく締め付けられて、桃城は越前の中に欲望を吐き出した。

 

 

それから息を整う間もなく体制を入れ替えてまた動き始めて――途中からは
残念なことに意識が朦朧としてよく覚えていない。ただ、文字通り一滴残らず
搾り取られて(!) 、気を失うように爆睡し、空腹を覚えて目が覚めた時には
日はとっぷり暮れていた。家族が田舎に帰っていて本当に助かった。

なあ越前。桃城は同じく空腹で目が覚めたのだろう、傍らの身体を背中から
抱き込んだ。

「もしかして、妬いてくれた?」
「別に」

即答するかわいげのない唇の端にキスを落とす。最初は何を拗ねているのか
さっぱりわからなかった。だけど、桃城を貪っている越前をみているうちに
なんとなく、そうおもったのだ。

勝利を収めた菊丸とのダブルス。越前は何もいわなかったけれど。

「心配するなよ。誰とダブルス組もうと惚れてるのはおまえだけだから」
「バッカじゃないの?誰が心配・・・――」

それ以上のかわいげのない言葉は唇で吸い取った。今日何度目かわからない
キスに身をゆだねてくる越前に、搾り取られたはずのそこが再び反応しはじめる
のを感じる。

意地っ張りで、卑猥で、かわいい奴。
おまえは俺のもの、だよな?

 

 

おわり
裏越前屋へ


突然かきたくなった襲い受リョマさんです(^^;)。タイトルは「卑猥でカワイイ」って意味。
氷帝戦の菊桃ダブルス読んで「こんなに息あってちゃー王子拗ねるだろうなー」と妄想して
かいてしまいました;でもやきもちだけじゃなくって、桃がかっこよかったのがくやしくて
萌えてしまった(爆)っていうのもあるの! 桃寄り視点だったんで入れられなかったんですが。