激しく降り続いていた雨は、桃城の家につく頃にはすっかり止んで、
鮮やかな色の残照がアスファルトにできた水たまりに反射していた。
雨が上がった今、二人は暖かい雨に包まれていた。
「俺んち、来るか?」
長いキスの後、わずかに離した唇から囁かれた桃城の言葉は、
もう承諾する以外の選択肢はなく。二人は手を繋いだまま
桃城の家に向かった。それはひとときも離れたくないという
あまやかなものではなく、むしろ逃がすまいという意図が
桃城の手には感じられた。
家族は誰も帰っておらず、がらんとしていた。
頭から足の先までずぶぬれの二人がまず向かったのは風呂場。
無残に汚れたジャージやら靴下やらを無造作に洗濯機に放り込む。
「お前も入れとけよ、越前。ズボンはともかく、シャツなんかは
帰るまでには乾くから」
「・・・ッス」
返事をしながらも、洗濯機と桃城をちらっとみながらなかなか
服を脱ごうとしない。
いつもここで自分の家のようにくつろいでいる越前だ。
まさかいまさら遠慮しているわけでもないだろうが・・・。
だが、そんなことを考える余裕があったのはシャツに手を
かけたままの越前の姿を改めて見るまでのことだった。
すっかり濡れそぼったシャツは越前の身体に張りついて、
その華奢な線をいつも以上にあらわにしている。薄手の生地に
透けて浮かび上がる肌の色や未成熟の骨格が、桃城の目に
鮮烈に灼きついた。
先刻感じた野蛮な欲望が、より強い衝動となってよみがえる。
細い身体に、それに似合わず強い意志をもった大きな瞳。
滑らかな肌の下にはだれよりも熱い血が流れているのを桃城は
知っている。
組み敷けば容易に堕ちる身体と、何度身体を重ねても
とらえどころのない心。
彼の全てを自分のものにしたい――
顎を伝った雫が、鎖骨に落ち、シャツの中に滑り込んだ時、
気がついたら桃城は越前を抱きしめていた。
越前が何か言って抗ったが、とりあわなかった。
「脱げよ――それとも、俺が脱がしてやろうか?」
ひやりとする耳朶を噛みながら囁くと、欲望に掠れた声に
越前の肩がびくりと震えた。
耳の裏を吸い上げ、そのまま唇で首筋をたどる。弱点を攻められて
越前はくぐもった声をあげて桃城の肩にしがみつく。
「あッ・・・」
鎖骨のくぼみに唇を落とし、布越しに透けている、すっかり
勃ち上がった突起を口に含むと、固い実を舌で転がした。
もう一方の実も親指の腹で弄りだすと、越前は身体を捩って
逃れようとした。
「も・・・先輩・・・オレ、シャワー浴びたい」
布越しの愛撫にもどかしそうに身体を熱くしているくせに、越前は
なおもそんなことを言って抵抗する。ここでやめたら自分だって
困るくせに。
いいぜ、と唇にキスを落とすと、濡れてはずしにくくなったズボンの
ボタンに手をかけた。深く舌を絡ませながら、下着ごと床に落とす。
むき出しになった両脚を抱えると、風呂場に入った。
「ッ!や・・・待っ・・・!」
暖かい雨が、絶え間なく頭上に降り注ぐ。
頭にも背中にも。激しく、叩きつけるように。
湯気で霞んだ視界の中で、濡れたシャツを着たまま桃城を受け入れ
させられている越前の背中はひどく扇情的だ。深く突き入れられて
身じろきするたびに肩甲骨が動くのが布越しに見える。
自分の中にいる桃城を感じて背骨がしなるのがわかる。
そして、シャツのすその下で桃城を受け入れている、むき出しの秘所――
「今のお前の格好、すっげーいやらしい」
越前が羞恥で熱くなるのを承知で、欲情を露にした声で言ってやる。
案の定かっと熱くなった身体をしっかり抱え込むと、手加減なしに
突き上げだした。
「ァッ・・・アッ・・・ァン・・・ァンッ!」
優しくなんてしてやれない。湯で煙った風呂場に反響する越前の艶声に
ますます自身が猛るのを感じながら、狭くて熱い肉壁をひたすら
抉り続ける。
時々行き場を探してどうしようもなくなる、通り雨にも似た欲望を叩きつける
ために。
越前が好きだし、大切にしたいと思っている。
でも、優しいキスや抱擁ではとても満足できない自分がいる。
気が向いたときにしか振り向かない越前を、組み敷いてめちゃくちゃに犯したい。
彼の意志などお構いなく、無理やり奪っておもうさま貪りたい。
――それこそ今の自分のように。
時折、桃城の心をよぎる、通り魔のような凶暴な衝動。
自分の中に巣食うものの正体から目をそむけるように、桃城は細い腰を
両手で掴むと、自身の欲望をおもいきり叩きつけた。
おわり
裏越前屋へ
うぶうぶでやめとけばいいのに・・・。
書いた本人が物足りなかったみたいです(^^;)
しかも中途半端なところでおわってるし;
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