.IDの流さまからいただきました〜♪あさしんでイラストがいただけるとはおもわなかったので感動です(>_<)ありがとうございます〜!! どうですこの流し目、そしてキスマーク♪うれしくって何かちょこっと文章を…とおもって描いたのが↓です。(ちょこっとじゃない…) |
苛烈な太陽と熱砂の国、ウバール―― 小さいながらも伝統があり石油産出国でもあることから今日も繁栄を誇っているこの王宮に 夜半の礼拝を終えて皆が寝静まる頃、四季を問わず花が咲き乱れている庭園に、前王の 前王、ハサド国王は、王宮の中庭をこよなく愛していた。年間を通してほとんど雨が降らない ハサド前国王は1年と数ヶ月前に崩御した。以前から病を患った末の病死ということだったが、
「――それで?」 謁見の間で、直江――彼をそう呼ぶ者はここにいない唯ひとりしかいなかったが―― アラブ人離れした整った容姿は、未婚既婚を問わず女達には密かな憧れの的だったが、 「わたくしの話を疑っていらっしゃるのね!?ならわたくしの侍女にも聞くがいいわ。 ヒステリックな女の言葉に、直江はすっと目を細めた。 「ほう。で、その血塗れた者というのが私のことだと言うんですか。ではそうだったとして、 「そ…それは」 切り込まれて第5夫人は言葉につまった。だがそのことこそ彼女が言ってやりたいこと だがいくら前国王の妻だろうと、現国王に面と向かって前王殺しとののしるわけには 「父上は間違いなく病で亡くなられたのですよ、義母上。それに御言葉ですが暗殺された 夫人はさっと青ざめた。後宮から放り出す、というあからさまな脅しに真紅の唇をきゅっと 直江は溜息をついた。ハサド王の幽霊を見たという者は彼女だけではない。女官や警備の者 「…どう思う、ウマル」 肘掛けに頬杖をついたまま、直江は側にいた老臣に声をかける。彼はハサド王の忠実な そのウマルは渋い表情で、ただでさえ皺の多い顔にさらに皺を寄せた。 「追い出しなさいませ」 「…そうじゃない。幽霊の話だ」 後宮の問題も頭が痛いが、今は後回しだ。ウマルの答えは明快だった。 「ご自分で確かめられたらいかがです?」 もっとも、と彼はそこでふと目元を和らげた。 「もしハサド様にお会いできるなら…恨み言を言われてもいい、お会いしとう
夕刻の礼拝の後、直江と廷臣達は広間で一緒に食事をとる。直江を上座として 「何事だ」 「へ、陛下…」 おそらく今しがた部屋に入ってきたばかりなのだろう、衛兵はおろおろと礼を取る。 「申し訳ございませんっ!すぐに代わりのものをお持ちしますゆえ」 「この食事を運んできた者は」 「今捜させております」 衛兵や使用人達が右往左往するうちに、野次馬たちも集まってきた。目だけを そのいろとりどりの野次馬の一人に、直江はふと目をとめた。他の女達と同様に 衛兵が後始末のために野次馬を追い払いはじめると、女は何事もなかったかのように
(あの女――) 直江は女が消えた方向をじっと見つめたまま立ちつくした。
夜半の礼拝の後、直江はひそかに中庭に張り込むことにした。例の「幽霊」を 夜の中庭は見る者がいないのが惜しいほど幻想的だ。噴水はやや水量を落とし、 一刻ほどたっただろうか。宮廷は完全に静まりかえり、各部屋の明かりも消えた頃、 白の頭布に白の長衣、その腰帯――加えて生前のハサドそのままの背格好。 直江の直感は正しかった。中庭の一角でカサリ、と音がしたかとおもうと、別の人影が 女だった。黒いヴェールと長衣で全身をすっぽりと包んだ女。 (あの女か?) 似ている気もする。だがこの距離と暗がりでは判別できない。 「待――」 追いかけようとした直江は、しかし最後まで声を発することすらできなかった。
気がつくと、見慣れた天蓋がそこにあった。 (朝、か――?) まだ暗いが、夜明けの礼拝前独特の、宮廷内で人が動く気配がする。直江はがばっと (夢――?) 服装は昨日のままだ。サンダルは無造作に脱ぎ捨ててあったが、着替えもせず、 乱れかかる前髪をかきあげながら直江は昨日の行動を思い返す。庭で「亡霊」を見かけ、 それからの記憶がない。 (いや) 着替えるために一度脱ぎ捨てた長衣を拾い上げた。土がついている。
後宮は、国王を除いては、たとえそこに住んでいる者の親兄弟でも男が足を踏み入れることは 「白昼堂々とこちらにお越しになる国王もなかなかおりませんわね」 案の上、嫌味を言ってきたのは先日幽霊騒ぎで謁見の間に乗りこんできた第5夫人だ。 「夜にうかがったら余計にあらぬ噂がたつでしょう」 「・・・何の御用かしら」 王の寵愛を根こそぎもっていった憎い女の息子。横から現れて王位を攫っていった男。 「あなたの侍女の中で、一番最近召し抱えた娘を呼んでくれませんか」 夫人は不審そうに眉を寄せた。だが相手は曲がりなりにも国王だ。 「ファーティマのことかしら。誰か、呼んできてちょうだい」 呼ばれてきた娘が入ってきた。主人の影響か、みな色とりどりのヴェールや服を着ている 直江は侍女の前に立ち、穏かな声で命じた。 「今日の夕食の後、私の部屋に来なさい」 「なッ…」 叫んだのは第5夫人だ。夜に侍女を王の部屋に呼ぶ意味は一つしかない。 「いいね?」 否を言わせない確認の言葉に、侍女はゆっくりと一礼した。
この事は一大スクープとして、第5夫人の口から後宮中に広まるだろう。
そしてその夜。 「あなたでしたか」 影に向かって、直江は呼び掛けた。 「父上の幽霊を徘徊させて人心を惑わしただけでなく、それを利用して東側と通じ、 第一夫人、と。 「おまえは息子を殺したわ」 やや低めの女の声は、意外に冷静だった。 「陛下を殺した犯人がやったということになっているけど、私にはわかる。おまえは 蒼い光の中、わずかに口端をつりあげた直江の表情はぞっとするほど冷酷だった。 「混乱に乗じて私のものに手をつけようとしたのは兄上の方ですよ。盗人にはふさわしい その言葉に女はかっとして引き金にかけた指に力をこめる。
直江の頬を風がかすめた。 「この節操なし」 ヴェールの下からのぞく、黒々とした瞳がはっきりと非難の表情を浮かべて直江を 「おまえが普段どうやって女を漁っているかがよーくわかった」 「いいがかりはよしてください。ちゃんとあなたを選んだでしょう?」 言いながら、目から下を覆っている布を外す。小作りな、しかし意志の強そうな顔が 「その格好、似合ってますよ」 本気で誉めたのだが、侍女――の格好をした高耶は不愉快そうに眉をよせた。 「オレが好きこのんでこんな格好でいると思うか。後宮の始末くらい自分でしろ。 にべもない口調に、直江の片方の眉があがる。 「イギリスに助力を頼んだ覚えはありませんよ。そちらこそひとの国でスパイごっこ 「毒見役がすりかわったことにも気づかなかった奴がえらそうに・・・」 二人は仇同士とばかりにぎりぎりと睨み合った。 「・・・やめましょう。こんなつまらない言い争いをするためにあなたを呼んだんじゃない」 溜息をついて、高耶の頬にふれた。振り払われるかとおもったが、意外にも高耶は 「――誰でもよかったんだろ・・・」 目を閉じてくちづけを受けながら高耶は呟く。そう、犯人をおびき寄せるために侍女を 「んぅ…」 「あの誓いから、女を抱いたことは一度もありませんよ」 嘘だと思うなら、いくらでも試せばいい。 直江は完全に力の抜けた身体を抱え上げると、隣の寝室へと消えて行った。
おわり せっかく高耶さんいらすとなのに高耶さんの出番が少ない・・・くすん(;_;)
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