Tea Time
ばーい 京香さま
「高耶さん、何をしているんですか?」
ソファに座って手の中の物を見ていると、上から声を掛けられて高耶は顔を上げ た。
すると、風呂から出てきたばかりの直江が、爽やかな薫りを纏いながら後ろから
覗き込んでいた。
「直江、上がったのか」
気が付かなかった、と小さく苦笑する高耶に直江も微笑を返した。
「私が来たのにも気が付かないなんて…。何をそんなに熱心に見ていたんですか ?」
嫉妬半分、興味半分で問いかける。すると高耶が手の中の物を目の前に差し出して
きたので、直江はそれを手に取って興味深げに見た。
それは、ガラスで出来た試験管状の筒だった。頭の部分にはコルクが填められており、
中には小さなハートの形をした茶色の固形物がぎっしり詰まっている。パ ッと見では
何だかわからない。直江にもわからなかったようで、手の中のそれを回しながら、
「これは、何ですか? ………紅茶?」
直江が、筒に貼り付けてあったラベルを見て言った。
「そう! 当たりっ! 紅茶なんだって!!
オレも初めて見た時は何だかわか らなかったんだけど、紅茶って聞いて
ビックリしたぜ!」
体を捩りながら興奮したように言う高耶に、直江も面白いですね、と相槌を打っ た。
今は、女性向けの可愛いらしく珍しい商品が次々と販売され、雑貨屋やギフト店を
賑わせている。たまに行くデパートでも目にするので、そういう存在は知っていた。
だが、女性に縁のない(言い寄ってくる女はいたが、直江はてんで相手に しない)
直江や高耶(こちらは、ただ単に気が付いていない)は当然手にするこ とはない。
なので、初めて見る新しい形の紅茶に、高耶も直江も興味を引かれた のだ。
しかし……、
(高耶さんはどこからこれを手に入れたのだろうか? まさか自分で買うはずが
ないし……)
しばらくそれを眺めていた直江だったが、その胸の内に疑念と嫉妬の炎が渦巻き
始めたのがわかった。
女性ウケしそうなその「紅茶」は、とても高耶が買うような代物ではない。だと したら、
誰かから貰ったというのが妥当な線だ。別に高耶が、他人から何を貰おうが
直江が口出すことではないのだが、その可愛らしい外見と、中にぎっしり詰まっている
ハートが妙に気にかかる。何か深い意味があるようで…。
ここまで考えて、直江はハッと我に返った。
(いかんいかん、一人で考え込むのは悪い癖だ。これは直接聞く事にしよう)
直江は顔を上げると、
「ところで高耶さん、これはどうしたんですか?」
極力冷静を保ちながら言うと、そんな直江に全く気がつかない高耶はポリポリと
頭を掻いた。
「ん〜。それがさー、バイト先の後輩が貰ってくれって言ってさ…。珍しかったから
貰っちった」
何故か目を逸らして照れ臭そうに言う高耶に、直江の眉がピクッと上がった。
「そう…。その方は女性ですか?」
違っていてくれ、と切望する直江を裏切るかのように、高耶の頬が引きつった。
(!!)
「えっ!? い、いや…、その……」
言葉自体は柔らかいのに、一気に低音になった直江の声に、高耶は初めて空気が
不穏な事に気がついた。それで咄嗟には言葉が出ず、誤魔化すように笑いながら
チラッと直江の瞳を盗み見ると、笑みをたたえている口元に反してその瞳は笑っていない。
「女性なんですね?」
ズイッと顔を近付けてくる直江に、高耶は冷や汗を感じながらしどろもどろに言 った。
「え、えっと…、だから〜」
(オ、オイオイ。これってもしかしなくてもヤバイんじゃ……? な、直江のオ ーラが恐いっ)
背後に、メラメラと燃える赤い炎が見えるのは錯覚か。思わずたじろぐ高耶に、
直江はたたみかけるように言った。
「高耶さん、どうなんですか?」
「…っ」
(こっ、ここで女と答えるのはマズイ、よな。女かどうかって聞いてるんだし。
それに直江のは、いつもの嫉妬だろうから……。ん? て事は、…そうだ!
男 って答えりゃいいんじゃん。「女」だから嫉妬するんだろうから、男って答えれば…)
高耶は自分の考えに満足して胸を張ると、叫ぶように言った。
「お、女じゃねーよッ。男だよっ」
すると、直江は一瞬キョトンとした。
「…男……です、か?」
その答えは予想と違ったらしく、意外な顔をする直江に高耶は内心ヤッタ! と 思った。
「そ、そう。男だよ。珍しいから一本やるって言われて…」
これはイケる! と思った高耶はここぞとばかりに言い募った。
「ほ、他にも貰った奴、いたんだぜ。オレだけじゃねーよ。だから…」
「そう、男ですか…。男…ねぇ……」
高耶の言葉を無視してブツブツと呟いている直江に、高耶は少しムッとして、
「おい、オレの話聞いてんのか、直江っ。男からなんだからいいんだろっ?」
形勢逆転とばかりに強く出る高耶に、直江は底冷えする眼差しを向けた。
それに ビクッと体を震わせると、直江はその氷の眼差しで射抜くように高耶を見た。
「何を言っているんですか、あなたは。男だからいいですって? ご冗談を。
男ならなおさら悪い」
「えっ」
「…その男、あなたに気がありますね」
「! な、な、なに、言って…!」
「何って…。その筒の中身が物語っているじゃないですかっ。ハート型の茶葉だ なんて。
女だったらまだわかりますが、男がそんな物を用意するだなんて、遠回 しに愛の告白を
しているに決まっている!」
「!」
突拍子もない言葉に目を見開く高耶。 一体コイツは何を言ってるんだ?
オレに気があるだって…? 馬鹿な。そんなこと、ある訳がない。
直江には嘘をついてしまったが、これをくれたのは実は女だ。仲間同志でおしゃべりを
していた所に偶然出くわして、珍しいから、と無理いって貰ってきたもの なのだ。
そしてそれは、直江にも見せてあげたかったからに他ならない。
しかし、そんな恥ずかしいことは言えないし、そんな事をして調子に乗られても困る
(←本当は困らないけれど)。だから言えなかった。咄嗟に誤魔化した。な のに、
(「その男」がオレに気があるだって!?)
一歩も二歩も前を行く男の論理には、正直眩暈を覚える。 けれど、今さら本当の事を
直江に言える訳もなく…。 困ったな、と顔を顰める高耶に直江は嫉妬に狂った瞳で
射抜いた。
「相手は誰なんですかっ。何を条件に貰ったんですかッ!」
「…は、はぁ〜!? お、おまっ、何言ってんの!? 考え過ぎだっつーの!」
「考え過ぎなんかじゃありません! あなたは自分がどれだけ魅力的な存在なのかを
知らないから、そういうことが言えるんです!!」
ヒク。 高耶は頬が引きつるのを止められなかった。 これはもうダメだ。ここまで来たら
もう止められない。 久々に直江は回ってしまったらしい。こうなると、自分は口下手なだけに
分が悪 い。いくら弁解してもすんなりとは聞き入れてもらえないだろう。
(これは、少し距離を置いた方がいいかもな……)
高耶は盛大にため息をつくと、直江の手の中にあった物を奪い取った。
「とにかく! これはそういうじゃないから、安心しろ」
「高耶さん」
「風呂入ってくる」
高耶はテーブルの上に紅茶の入った筒を放り投げると、そのまま席を立った。
そ して部屋を出ようと歩きかけた所で突然腕を引っぱられたので、体勢を崩した高耶は
ソファの上に逆戻りした。
「何しやがるっ」
「…逃げるんですか?」
「逃げっ!? …何だよ、逃げるってッ。オレがいつ逃げたよッ」
さすがにムッとして言い返すと、直江の鳶色の瞳がスッと眇められた。
「今、私の前から逃げようとしたでしょう、強引に話を終わらせて。
……あなたはいつもそうだ。自分に不利な情況になると、すぐ逃げる事によって
強制的に終わらせる。あなたはそれで良いでしょうけれど、相手をする私の身にも
なって下 さい。誤魔化されるのは御免だッ」
「直江っ」
「何ですか。何か間違ったことを言いましたか」
「…っ」
直江の言っている事は事実なだけに、高耶は言い返せない。思わずギリッと歯を
噛みしめると、それをどう取ったのか、直江が嘲るように笑った。
「今度はだんまりですか、高耶さん。それも「逃げ」ていると言われても仕方ない
行為ですよ」
「!」
直江の容赦ない言葉に、高耶の切れ長の瞳が凶暴味を帯びて直江のそれを貫いた 。
ごく一般の人間だったなら、数秒も直視出来ないであろう凄みのある眼差しだ 。
しかし直江は、その視線から逸す事はなかった。それどころかどこか挑むよう に、
高耶の瞳を見つめ返す。 と、そんな高耶を見ていた直江がポツリと言った。
「……どうやら、あなたの体に直接聞いた方が早そうだ」
「! な、なに…っ」
驚きに目を見開く高耶に、直江はうっすらと笑みを浮かべ、
「言葉で答えが聞けないというのなら、体に聞くまでと言ったんです」
言いながら覆い被さってきたので、高耶は鋭く息を飲んだ。
「……なおえっ!」
「あっ……、やめっ、…なお、え……!」
暗い部屋の中、ベッドの上には獣の態勢で腰を突き出している青年と、その青年と
同じく全裸状態の男が体を密着させていた。
「やめろ、じゃないでしょう? 高耶さん。ココをこんなにしているくせに」
言いながら、戯れ程度に入り口を弄っていた直江の指が、そこにぬるりと入れら れた。
とたんにキュッと窄まるその感触に、直江は意地悪そうな笑みを浮かべる 。
体液で充分に潤んでいるため、直江の節くれだった指はなんなく奥へと入り込ん だ。
まるで自ら道を開くかのように、すんなりと入っていく。
「さっきまで俺のを飲み込んでいただけあって、反応が凄いてすね。指なんかじゃ
足りないって喘いでいますよ」
直江はわざと皮肉気に言いながら、入れた指をかき回すように動かした。
「! あぁ…ん!」
自身とは違い、細やかな技を仕掛ける事が出来る指は、高耶の快感をすぐに導き出す。
弱いポイントを微妙な力で突つかれると、つい背が反ってしまう。
また、 擦られるのではなく、抉るような刺激がたまらなかった。
高耶は全身を震わせながら、甘い悲鳴を上げる。
「んっ! あぁ…ッ! やっ……、なおえ、……よ、せ…」
ガクガクと腕を震わせて後ろの刺激に耐えていると、直江はうっすらと笑みを浮かべた。
「止めていいの? こんなにココをヒクヒクさせているのに」
「! ヒッ、あっ!」 直江はすんなりと指を抜いてはくれたが、今度は指の腹で高耶の
下の口をしきり に擽っている。たったそれだけのことにも、高耶の体は反応を返した。
挿入されるのとは違う淡泊な刺激が、高耶を苦しませる。しかももう一方の手は 前に回って、
放っておかれたままになっている棒を上下に扱いている。時たま、 そばにある袋にも戯れを
仕掛けられるので高耶はたまらない。 前後に与えられる愛撫に耐えられず、思わず足を
引き寄せようとするが、それよ り早く直江の手に阻まれた。
「な、おぇ…ッ、やだ…、…そ…れ」
入れられることに慣れているそこは、触れるだけの刺激では物足りない、
しかも たった今まで男の指を銜えていたのだからなおさらだ。そよぐような愛撫が
焦れ ったくて、高耶は腰を振りながら哀願した。
「なおえ、なおえぇ…! も…、やだ……ッ!」
逃れるように腰を動かす高耶に、直江はやや気分を損ねたようだ。シーツをキツ く
握りしめる高耶に、冷えた眼差しを当てる。
「嫌だ嫌だとあなたはそればかり。では何ならいいんですか?」
「……ッ」
「私のものも指も嫌だというのなら、…仕方ないですね」
そう言って、スッと体を離した直江に高耶は緊張を解いた。が、
「…な、直江?」
不穏な気配を感じとって後ろを振り返った高耶の目に、直江の手の中に握られた物が
映った。 その物体を見た高耶の口が、奇妙な形で凍り付いた。
「ま、まさか直江、それを……ッ」
それは先ほど、高耶がリビングに置いてきた物だった。いつの間にか、男は寝室 に
持ってきていたらしい。 信じられない思いで目を見開く高耶に、直江はいっそ優しげな
笑みを浮かべた。
「あなたの中は充分に濡れているから、このままでも平気ですね」
言うと、衝撃で固まってしまっていた高耶の体を無理矢理抱き込んで、赤く色づ いていた
そこにいきなりそれを挿入した。
「! ア、アァァ……! ひっ…つめた……ヤメッ…!」
高耶の濡れた秘部に、先程まで高耶が手に持っていたガラスの筒が入ってきた。
異物を入れられているということと、その物体の冷たさに嫌悪して高耶は抗ってみるが、
ガッチリ抱き込まれてしまっているのでそれは適わない。散々嬲られたことにより
体に力を入れることも出来ず、そうこうしているうちにそれは奥へ奥 へと入ってきて、
高耶はあまりのことに涙を浮かべて制止を請うた。
「や、だ…! …ヤ……メロッて、…なお……えッ」
「偽るのはよしないさいっ! 指より太く、私のものより細い。これこそがあな たの
求めていたものではないのですかッ」
「チ、チガ……っ」
「違わない。現に、こんな喜んでいるじゃないですか」
直江が暗い笑みを浮かべながらそれをグリグリと回してやると、高耶は甲高い声を
上げてシーツを掻きむしった。
「ア、ん…! あ、イ、アァ……!!」
「イイ? 高耶さん。気持ちイイ? …折角だからコレも入れましょうね」
直江は高耶の中に収まっていたそれからコルクを抜くと、突き入れたまま揺すっ て
中のハート型茶葉を数個取り出した。
「ヒ、アッ……! いや……!」
中に入っていた物体が、不自然な動きで壁を蹂躙する。それに背を仰け反らせて
嬌声を上げる高耶。そんな高耶に構わず直江は筒を引き抜くと、代わりに数個、
固形物を穴の中に押し込んだ。
「ぁ…、あぁ……」
「小さな物だからたくさん食べられますね。もう少し詰めてあげましょう」
言いながらまた数個取り出して、高耶の中へと埋め込んだ。 高耶のそこは酷く貪欲で、
何個も詰め込んだ割にはヒクヒクと収縮を繰り返し、 もっと太いものを、と切なく喘いだ。
「心配しなくても大丈夫。今、コレを入れてあげますからね」
言うと直江は、今まで突き入れていた筒を今一度挿入した。
「! ア! アァ−−−…!!」
中には固形物がギッシリ詰まってるのだ。そこに棒状の物を入れられたのでは
たまったものじゃない。それたけでもかなりキツイというのに、直江はそしらぬ顔 をして、
それを回転させる。高耶の狭い道の中で固形物がジャリジャリと蠢いて 、
壮絶なる刺激に高耶は涙を千切り飛ばした。
「アァ……んっ! んっ、アッ。や、…いや……だ、…めろ、…なおえ…っ」
堅い固形物が、敏感な壁に当たってたまらない。
滴るほど濡れたそれが外に出されると、先ほど注ぎ込んだ直江の精液が穴から
ねっとりと伝い落ちて、高耶の足を濡らした。 シーツに二人分の淡い染みを作りながら、
それは高耶の肉道を何度も出入りする 。
「ふ、あ…っ、やぁ……! な、なおえぇ……ッ」
ぶるぶると体を震わせながら、やめてくれと高耶は泣き叫ぶ。
指とも男のものとも違うそれは、高耶に嫌悪しか抱かせない。しかも、通常そういう事に
使用されるものではないという一般論が、高耶を更に苦しめた。 どうにかしてでも
抜いて欲しいのだが、直江はその手を緩めようとはしない。
それどころか、何度も何度も高耶の中に出入りを繰り返すソレを、どこかウットリとした
表情で眺めている。
「高耶さん…、素敵だ…。……高耶、さん……」
囁くような甘い声が高耶の羞恥を煽る。 高耶は千切れるほどシーツを掴みながら、
絶叫を迸らせた。
「ん、ぁ、…も……やっ、いや……、だ――…ッ!! も…抜いて――ッ!!」
数時間後。 シーツに力無く横たわっている高耶に、直江は縋るように身を寄せていた。
「高耶さん…、まだ怒っているんですか……?」
プイッと横を向いて一向に直江と目を合わせない高耶に、直江は根気強く
声をかけ続けている。しかし、高耶は振り向いてもくれない。
「高耶さん…。もう何度も謝っているじゃないですか。許して下さい…」
怒っている背中に許しを請うが、高耶はピクとも動かない。 どうやらかなり
怒っているらしい。さすがにやり過ぎたか、と思った直江だった が、
(高耶さんも悦んでいたくせに……)
とは、口が裂けても言えない。 しかし、この状況は直江に取ってありがたくない。
誰よりも愛しい人に嫌われることほど、辛いことはないのだ(そうし向けたのは
自分のくせに)。 仕方ないな、と、直江は今まで口にしなかった単語を出す事にした。
「高耶さん…、あれを使った事を怒っているんですか?」
「…」
直江がおずおずと言うと、高耶が初めて反応を返した。それを目敏く見つけた直 江は、
ここぞとばかり言葉を繋いだ。
「あれを使ったことは謝ります。でも、元はと言えば高耶さんだっていけないんですよ」
そう言うと、思うところがあったのか、高耶はやっと口を開いてくれた。
「……何で、オレが悪いんだよ」
泣き叫んだせいで掠れた声が、腑に落ちないと弱々しく反論した。
「だってあなた、私に嘘をついたでしょう? 男から貰っただなんて」
(!?)
「わ、わかっていたのか? お前」
何とか誤魔化したと思っていたのに…、というより、そのせいで散々な目に遭っ たのに、
と驚くことで肯定した高耶に、直江はやっぱりと呟いた。
「いいえ。わかったのはたった今です。多分、そんな事ではないかと思ってはい ましたが」
そう言えば、「体に聞かれなかった」なって思って、高耶はすぐハッとした。
「! おまっ、騙したなっ」 引っかかったことに腹を立てて振り向くと、優しい笑みを
たたえた直江の瞳が自 分を見つめていた。
「…っ」
「やっと私を見てくれた」
「!」
急に照れ臭くなって再び顔を背けようとする高耶に、直江の手が一瞬早くそれを 阻んだ。
「待って! 先ほどのことは本当に反省しています。だから、もう許して下さい 。
…たかや、さん」
ギュッと抱きしめながら言うと、高耶はカァッと顔を赤らめながらモゾモゾと体を動かした。
「高耶さん…」
何度も何度も耳に囁く声に、ついブルリと反応してしまう。
「う…、い、いいよ。許してやるよっ。もともとはオレが悪かった(みたいな) んだし」
「高耶さん!」
とたんに嬉しそうに笑う直江に、高耶はわざと視線を逸らした。
(くそーっ、何でオレってこう甘いんだかな〜〜)
あんなにヒドイ事をされたのに、許してしまう自分が怖い。 直江の腕の中に
抱き込まれながらそう思った高耶の目に、先ほどまで自分の中に 入っていた
あの物体が、無造作におかれていたのが目に入った。
それを見た高耶の頬に朱が上る。
「…チェッ。お前に見せたくてわざわざ貰ってきてやったのに、あんなことに
使 いやがって…」
高耶は照れ隠しに大声で言うと、直江が「えっ?」と驚いた顔をした。
「た、高耶さん、それはどういう……」
「…知らねー!」
頬を染めてプイッと横を向く高耶に、直江は一瞬ポカンとしたが、
そのあと極上の笑みをその口元に浮かべたのだった。
おわり
Diamond
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