玄関先での忙しない情交を終えると、今度はベッドに場所を移して、生まれたままの姿になって抱き合った。
白い身体には、最後に会った数年前よりも、やはり傷痕が増えている。
以前にも見た、右肩の銃痕がひときわ目立つが、他にも胸やわき腹に、いくつもの銃痕や切り傷、火傷の痕までもが加わっていた。
よくも生きて帰ってこられたものだと肝が冷える心地を味わいながらも、傷の一つ一つに唇と舌を這わせると、途端にアカギの息が乱れ、中に入ったままだった南郷を締め付けた。
自分を包み込む、アカギの熱が愛おしい。
「探し物は、みつかったのか?」
アカギの中で再び脈打ち始めた欲望をゆるゆると動かしながら、南郷はたずねた。
もう気は済んだのか?と。
アカギは緩やかに与えられる刺激に目を潤ませながら、まあね、と答えた。
「理不尽な死がそこらじゅうに転がっていた…死ぬことも、生きることも、あの時ほど身近に感じたことはなかったよ」
そう言って、内部を擦られる感覚にうっとりと眼を閉じて甘い息を吐くアカギには、以前のような、何かに餓えて死にそうな危うさはもはや見られなかった。
代わりにずっと自分の中にあった何かを捨て去ったような表情に、一抹の不安を覚えつつも、とにかくよかったと腰の動きを速める。
繋がった部分が立てる秘めやかな水音は、腰を打ち付ける乾いた音や、次第に荒くなる二人分の吐息と一緒に室内を満たした。
引きしまった脚を抱えて狭い内部を抉り続けるうちに、自身をどろどろに溶かそうとする熱に何度も意識をもっていかれそうになる。
それに抗うように右肩の銃痕に噛みつくと、アカギは声にならない悲鳴を上げながら背を反らせ、両脚をビクビクと震わせた。
「あっ…あっ…イクッ…」
「くっ…アカギッ…」
アカギの声を合図に南郷がアカギの中に欲望を吐き出すと、内部に熱い液体が広がるのを感じて、アカギも自らの精を解放した。
「たくさんおかわりしろよ」
「そんなに食えないって…」
もう何度したか分からないくらいに行為に没頭した後で、固い椅子に座るのもつらかろうと、南郷はベッドにテーブルを運び込んだ。
冷蔵庫にある食材を使って、思いつく限りの大皿料理を作り、テーブルいっぱいに並べると、ベッドに沈みこんでいたアカギはそれを見るなり眉をひそめ、アンタは極端すぎる、と文句を言った。
最中に何度か空腹を訴えられたが、なかなか離れがたくて、後で好きなだけ食わせてやるからなだめすかして、今まで解放しなかったのだ。
飢え死にさせそうになったお詫びも兼ねて、料理が山盛りになった大皿を、南郷はほんの少しの後ろめたさと共にずい、とアカギに差し出した。
「腹減ったんだろ。たくさん食え。もう少し太らないと、抱き心地が悪いからな」
「…」
食べさせるための軽口のつもりが、アカギにジロリとにらまれて、南郷はしまったと口をつぐんだ。
不用意な一言で甘い雰囲気が一気に吹き飛ぶ。
全身から冷や汗を流す南郷の目の前で、アカギは盛られた料理に口をつけ始めた。
さっきの失言で機嫌を損ねたせいか、うまいという言葉は聞けなかったが、やはり空腹だったらしく、黙々と料理を片づけていく。
その姿にホッとして、南郷も別の皿を手に取った。
しばらく休んだら、アカギはきっとまた「何か」を求めて出て行くのだろう。
このまま南郷のもとにとどまるとは到底思えなかった。
それが彼の本質であり、性分なのだから仕方がない。
できることなら、この幸せが少しでも長く続いて、そして少しでも早く彼がここに帰ってきますように。
しんみりとそんなことを考えているうちに、南郷の手から皿が奪い取られた。
おわり
1にもどる
あれ、春霞は…?>二人の頭の中ってことで…スミマセン…お題の意味まったくなし。
本当は窓から外の通りの街路樹の桜のつぼみを見て、一緒に見ようなとかそんな会話に持っていくつもりが入れられませんでした(>_<) 本編読んでいない人には(いや読んでくださった人にも)やまなしおちなしいみなしえろで失礼しました;;
アカギ部屋
|