五月 時鳥
5 「アカギ…俺が悪かった…反省してるから、いいかげん機嫌直してくれ…」 連れ立って歩く気など毛頭ない速度ですたすたと先を行くアカギに必死で追いすがりながら、 「なあ…アカギィ…」 額からだらだらと汗を流し、息を切らしながら、世にも情けない声で南郷が声をかけると、 「アカギ…?」 南郷は躊躇した。アカギは、南郷のために足をとめたわけではなかった。 キョッキョキョキョキョ… こんなところで耳にするのが珍しいのだろうか。狭い敷地に植えられた木々のどこかから響く声に、 「ホトトギスだな」 そういや、最近聞かなくなったなあ、と思いながら言うと、アカギはへえ、と相槌をうった。 「なんでも、故郷に帰れなくなった王様の魂が鳥になったらしい」 近くで聞けばけたたましいに違いないその鳴き声が、どことなく寂しげに聞こえるのは、そのせいだろうか。 鳥居の前で、しばらく鳥の声を聞きながら、二人して煙草を吸った。 南郷は先に吸い終わると、ためらいつつも、アカギにお伺いをたてた。 「…なあ、手、繋いでもいいか?」 ほとんど人通りがないとはいえ、いい年した男同士で手を繋ぎたいとは、大胆な申し出である。 白くて指の長い、でも節の太い男の手だ。他でもない彼の手の指に自分の指をからめると、 すっかり満たされた気分になった南郷は、ここはどこだ、駅はどっちだ、と言いながらアカギと共に歩き出す。 「夕飯はどうする?そのう…当分うちにいられるのか?」 いつのまにか傾いて茜色になった太陽が、静まり返ったオフィス街も、その谷間で手を繋ぎながら歩く二人も、みな同じ色に染め上げていた。
おわり ううむ…ものすごく、こじつけくさい…収拾つかなくて困った… |
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