五月 時鳥


4


最初からこんな不埒なことを考えていたわけではないが、一番後ろの列の座席を選んでよかったと南郷はおもった。

もっと人が少なければ、そのままやってもよかった。
スクリーンの光に映し出されるアカギの乱れた姿はさぞかし綺麗だったろう。
今度は平日に誘うか…と考えながら、南郷はまだ足取りのおぼつかないアカギを支えて出口の扉を開けた。



映画館の扉は、途中で出入りする客がいても場内に光が入らないように、二重扉になっている。
ソファのような質感の、重い扉を開けると、場内よりも完全な暗闇が二人を包んだ。
その暗闇の中で、中扉に胸を押しつけさせて下着ごとズボンを引き下ろすと、アカギはさすがに抗議の声をあげた。

こんなところで何を…といいかけた口を、大きな手で塞いだ。

柔らかい耳朶を口の中でころがし、濡れた欲望の切っ先を、露わにした秘所にぐりぐりと押しつけながら、南郷は低い声でたしなめた。

「あんまりしゃべるとばれちまうだろう…いいのか?こんな恥ずかしい恰好を人に見られても」

今朝方繋がったばかりとはいえ、また小さくすぼまっているその部分を十分に濡らしてから、そっと指をもぐりこませる。

「ぅっ…」

行為に慣れた身体はやはり後ろへの愛撫を待ちわびていたらしく、南郷の太い指を咥えこんできゅっと締めつけた。

「んっ…んぅっ…」

中で指を折り曲げ、指の腹で内壁を擦るように抜き差ししているうちに、アカギは扉に両手をついたまま尻を突き出し、指の動きに合わせて、催促するように腰を動かしはじめた。
くぐもった声は甘えるような響きを含んで、塞いだ手をちろりと舐めた。
湿った生温かい感触に、もう欲しいという意図を察して、
南郷は指を引き抜き、かわりに限界まではりつめた怒張を狭い孔の中にねじ込んだ。

「んっ…んんっ…!」

中は想像した通り、溶かされそうなくらい熱かった。
上映中とはいえ、だれが扉をあけるかわからない。
こんな危うい密室での情事をアカギも愉しんでいる、と悟った途端に、アカギの中に入れた雄がますます大きくなった。
彼の中で固く大きくなって脈打つ雄を、熱い身体は震えながら何度も締め付ける。
己のコレを、アカギが悦んでいる…そうおもったら胸が熱くなって、南郷は片手で腰を抱き寄せると、
勢いよく腰を打ち付け始めた。

「んっ!んんっ!んぅっ…!」

容赦なく中を抉られ、擦り立てられながら、口はしっかりと塞がれている。指の間から洩れるくぐもった声は苦しそうだ。
塞いだ指に彼が流した涙を感じた。かわいそうだが、ここで声をあげられたら、確実に人が来てしまう。
本当は南郷だって、アカギの声を聞きたい。普段の声より少し高めの、快楽に甘く掠れた声。
そんな声を上げている時は、彼は南郷だけのものだ。

「んっ…んんっ…!」
「くっ…アカギ…ッ!」

苦しい思いをさせている罪悪感と、こんな場所で声を殺して彼を抱いているという優越感、
ないまぜになったそれらを上回る、彼の中の熱と締め付けに、南郷は我を忘れて奥へ奥へと己をねじ込み、
とうとう欲望の全てを、彼の中に注ぎこんだ。




 

入れてからが短い…とりあえずこれで。

アカギ部屋