6.5cmの恋人

4

 

タオルにくるんだ啓介を手に、重い足取りで啓介の部屋へ戻ったのはそれからのこと。
くしゃくしゃになったシーツの上に腰をかけて膝の上に啓介を乗せると、
啓介は戸惑う拓海をよそにさっさとジッパーを引きおろしにかかった。

「ちょ、ちょっと!」

ごそごそと中の布を引っ張り出している啓介の身体を拓海はあわてて摘んだ。
動きをとめられた啓介はムッとしたように拓海を睨む。

「あんだよ、どうせやるならさっさと済ませたほうがいいだろ」

それはそうだが。でもコトがコトだけに心の準備ってものが・・・。
口ごもる拓海に、啓介の目がきりきりとつりあがる。

「こんな身体になっちまって、ぐずぐずしていたら死んじまうかもしれないぜ?
おまえそれでもいいのかよ」

これはりっぱな脅迫だ。
まさか、とは思いながら拓海の手がゆるむ。
啓介は邪魔な布をかきわけると、中でひっそりと息づいているモノに小さな手で触れた。

「ぁ・・・ッ!」

子供の手よりも小さなそれで無造作に掴み出された拓海自身は、
羞恥と裏腹な期待で小刻みに震えていた。
それをなだめるように両手でさすりながら、今や啓介の顔よりも大きな亀頭の先端に
舌を這わせた。

「おまえのココ・・・溝の中まですげーよく見えるぜ。
舐めてもどんどん白い汁がでてきて、すげーエッチな感じ」
「いうなよ、ばか・・・ァッ」

自分すら見ていない細部まで見られていると知って、拓海は真っ赤になって目をつぶる。
だが分身のほうは拓海を裏切り、歓喜に脈打ちながらその容量を増していく。
みるみる自分の身長より大きくなるそれに、啓介は表側にまわり、またがった。
先端に啓介を乗せた船は、啓介が舌を差し込むたびに反り返り、振り落とそうとする。

「わっ、ちょっと、拓海ッ。落ちないように支えてろよッ」
「えっ!?」
「これじゃ、ちゃんと飲めないだろ。元に戻るためなんだからおまえも協力しろよ」
「う・・・」

そうこれは治療なのだ。それに小さいとはいえ、自分の分身の先端につかまって
ぶら下がられては拓海もつらい。
羞恥をかみころして己の手をそえると、啓介はその手を足場にして、
先端からとめどなくあふれてくる雫をちゅうちゅうと吸い始めた。

「あっ・・・や、だっ、啓介さ・・・」
「やじゃねーだろ、こんなにヨダレたらして・・・コレだけで腹いっぱいになりそうだぜ・・・」
「あ、んんっ」

啓介の指摘に消え入りたい気持ちになりながらも、啓介にいじられているそこは
ますます硬くなり、腹部につきそうなどにはしたなく反り返った。
啓介を握りこむ手は無意識に力が入り、ゆるく上下する。

「気持ちイイ?ほら、はやく出せよ」
「あっ・・・も、イク・・・!」

拓海は背をしならせると、啓介の顔にドクン、と白濁を吐き出した。

 

 

 

 

顔どころか身体全体にかかってしまったそれを洗い流すために、
啓介は再び洗面器に張ったお湯で洗われた。

「啓介さん・・・」

指先につけたシャンプーで頭を洗ってやりながら、
拓海がきづかわしげに声をかけるが返事もしない。
免疫をもっているはずの拓海の体液をあびるほどに飲んだにもかかわらず
何の変化もなかったのだ。
元に戻るどころか一ミリも伸びていない。

「・・・俺、一生このままなのかな」

きれいになった身体をふたたびタオルでくるまれて寝室に戻った後、
啓介がぽつりと言った。

「こんなんじゃ、クルマにも乗れねーし、おまえとえっちもできないじゃん。
いろいろあるけど・・・おまえとバトルできないのが一番悔しいよ」

啓介は拓海に背を向けると、タオルを頭からかぶって小さな身体を震わせた。

「啓介さん」

触れてくる指を拒むように身を捩る啓介に、拓海は溜息をついた。

「一度だめだったからってあきらめるなんて、啓介さんらしくないですよ。
今までどんなに不利なバトルだって、絶対あきらめたりしなかったじゃないですか」

真摯な言葉に、啓介は背を向けたままじっと耳をかたむけた。

「涼介さんがきっと何とかしてくれますよ。絶対元に戻りますよ。
涼介さんはすごい人なんだから」

おとなしくなったものの、それでもこちらを向こうとしない啓介に、
拓海は穏やかに言葉をつなげた。

「それでも、もし、このままだったら・・・
ねえ啓介さん、俺が啓介さんのこともらってもいいですか?」

おもいがけない言葉に、啓介は驚いて振り返った。
涙の跡が残る目でまじまじと拓海を凝視する啓介に、
拓海はちょっと照れたように笑う。

「だって、そのサイズならずっといっしょにいられるじゃないですか。
朝の配達も仕事も、バトルの時も。
それから・・・将来プロのドライバーになったら、一緒にレースにでましょうよ」
「拓海・・・」

いつも一緒にいられないのが寂しいなんて。
思っているのは自分だけだと、啓介は思っていた。
拓海はタオルごと啓介をすくいあげると、ちょっと考え、啓介の頭に唇を落とした。

「・・・誓いのキスは口にするもんだろ」

啓介は優しく抗議すると、自分の顔ほどある唇の一部にキスをした。

 

 

それから二人は雑誌を見たりゲームをしたりしてほのぼのと過ごし、
涼介は何かを調べてくると夕方から大学に行った。
拓海は、こんな状態になったままの啓介を一人おいて帰ることもできず、
明日の配達に間に合うように帰るからと、その日も啓介の部屋に泊まりこむことになった。
おやすみのキスをして、ひとつ枕に仲良く頭を並べて(?)眠りについた。

 

・・・妙に息苦しくて目が覚めた。
覚えのある息苦しさ。暖かいがこのままでは息ができない。
もがくと余計に羽交い絞めにされ、拓海はじたばたと暴れた。

「も・・・・・・啓介さん・・・ッ!」

抗議するように敵の顎を下から掴み、その反撃に両腕が緩んだ隙に
がばっと起き上がった拓海は、そのままの格好で固まった。

「うー・・・・・・んだよ」

そこに転がっていたのは、狭いFDにしてもてあますほどよく育った、身長182cmの男前だった。

 

 

 

 

「アニキってばひでーんだぜ。ここんとこ毎朝試験管渡されてよ」


涼介としては元に戻った啓介を調べたくて仕方がないらしい。
だが採血(というか注射)を断固拒否する啓介に、
代わりに精液を差し出せと要求しているらしい。
将来の医者としての興味だとわからなくもないが、
あの涼介が毎日弟のアレを熱心に顕微鏡で調べているのかとおもうと
拓海の心中も複雑だ。

「・・・でもまあ、元に戻ってよかったですよね」

たった一日だったけどひやひやしました。と笑う拓海に、啓介もニッと笑う。

「そうだな、おまえのプロポーズも聞けたしな」

えっと拓海が啓介を振り仰ぐ。

「オレのこと、もらってくれるんだろ?」

意味を解した拓海の頬がさっと染まった。

「あ、あれは元に戻らなかったらの話で!」
「戻ってもオレはオレだぜ。小さくなきゃダメなんてそりゃ冷てーんじゃねーの?」
「こんな図体でかい人いりません!」

・・・あのままのサイズだったら、本気でもってかえりたかったのになー。

とちょっと残念に思っていたことは、拓海だけのささやかな秘密である。

 

おわり

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