新年 |
1
「・・・年があけちゃったじゃないですかもー・・・」 ここは砂漠の中の王国、アカギ。 親衛隊長である史浩の口車にのせられてこの王宮に連れて来られた時は、 (一体何日ここにいるんだ・・・?確か来る前は山に牧草が生えていたよな・・・) 「おまえがとろとろ話してっからだろ」 その傍らで、やはりしどけない姿で寝そべり、片手で頬杖をついた啓介が答えます。 もっとも、そんなことは露ほども自覚していない拓海は、啓介の無神経な返答に、 「今の今までねばっていたのは誰だよ! ってそうじゃなくて! 確かに交渉したのは啓介ではなく史浩です。 (俺、もしかしてずっとこのままこの人の相手させられるのか・・・) 拓海は目の前が真っ暗になる心地がしました。 「・・・そんなに嫌かよ」 彼らにもう会えない、と思わず涙ぐみそうになっていたとき、低い声で啓介が呟きました。 「そんなに帰りたいんなら帰れよ。今までひきとめて悪かったな」 今までにない冷たい言い方に、拓海はおもわず啓介の背中に手を伸ばしましたが、 「触んな!」 鋭い制止の言葉にびくりと動きを止めました。 「さっさと行けよ。今行かねーと一生ここから出さねーからな」 冗談とは思えない脅しの言葉に、拓海は一瞬ためらった後、踵を返して部屋を出て行きました。
|