新年 |
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「・・・・」 なんとも気まずい空気が、広い部屋に漂いました。 「あの・・・」 十分すぎる間をおいて、拓海がとうとう口を開きました。 「お腹、すかないんですか?」 シーツの山がごそごそと動き、やっと啓介の顔が現れました。 「何で戻ってきたんだよ。ここが嫌で出て行ったんだろ?」 ぷいと横をむいてはき捨てる啓介に、拓海の眉がわずかに寄りました。 「啓介さんが出て行けって言ったんですよ?それに嫌で出て行ったわけじゃないです」 そういってしまってから、拓海は一瞬口をつぐみ、あわてて付け加えました。 「啓介さんが毎晩あんまりしつこくしないで、あと変なプレイもしないで、好きなときに家に帰らせてくれればですけど!」 啓介の目が、まっすぐに拓海の目を捉えました。 「オレのことは?嫌いじゃないのか」 促されて出てくる言葉に自分で驚きながら、拓海の顔はみるみる赤くなりました。 「なら、こっちに来いよ」 当然のように命じる啓介に、拓海はふらふらと近づいていきました。
それから十分とたたないうちに、室内から悩ましい声と荒い息遣いが聞こえ始めました。 「あっ・・・あんっ・・・・あんっ・・・あんっ」 ざらざらした舌で前も後ろも舐め上げられ、若い拓海は何度も達してしまいます。 (あっ) 拓海は顔を上げようとしましたが、啓介の強靭な両腕に阻まれて、そのまま快楽の波へと押し流されていきました。
「・・・あんた、家の近くの山で俺の事襲いましたね?」 いつのまにか夜もとっくに更け、腹へったな〜と呑気に寝そべる啓介に、拓海は低い声で問いかけました。 「なんのことだ?」 ととぼける啓介の左上腕を、拓海は怖い顔で掴み上げました。 「へっ、せっかく外でやるチャンスとおもったら、おまえ山猫みてーにめちゃくちゃ暴れるんだもんよー」 ばれた瞬間に居直る啓介に、拓海は拳を振り上げました。 「バカ!どんなに怖い思いしたとおもってるんですか!俺、知らない奴にやられるって思って・・・!」 拳をつかまれてもなお身をよじって、ぼろぼろと涙をこぼす拓海を抱きしめて、啓介は自分のしたことを後悔しました。 「・・・悪かった。ごめんな」 皆まで言わせず唇をふさぎ、とめどなくこぼれる涙がとまるまで吸い取ると顔じゅうにキスの雨をふらせました。 「嫌いなんていうなよ・・・」 ふたたび身体に手を這わせながらつぶやく啓介に、拓海はずるい、とおもいました。
こうして拓海は再び王宮で暮らすことになりました。
おわり
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