新年 |
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ある日の夜遅く、ぼろぼろの姿で帰ってきて以来、
「おい拓海」 愛馬のハチロクにブラシをかけながらぼんやりしている拓海を、文太は呼びました。 「配達に行って来い。行き先は王宮だ」 行き先を聞いてあからさまに動揺する拓海を、文太は細い目でながめました。 「ついでにその馬もかえして来い。こんな商売してちゃあ、ろくに乗ってやることもできねぇ。 父親の真意がわからず戸惑う拓海の前で、文太はふーっと紫煙を吐きました。 「そいつを王様に届けたら、あとはここに戻ってくるなり、向こうに留まるなり、好きにしろ。 否を言わせず、送り出した息子の後姿を、文太は複雑な心境で見送っていました。 (娘を嫁に出した気分だな・・・) 彼にはなんとなく、拓海がもう家に戻ってこないだろうことがわかりました。
王宮の門をくぐり、王様への献上品を持参してきた商人の列にならびながら、 ところが、前に進み出たとたん、「ああっ!」という声が響きました。 「ちょうどよかった!ちょっときてくれ!」 逃げ出す間もなく腕をとられ、馬と豆腐はそのままに、王宮の奥へと連れて行かれました。
「そろそろ迎えに行こうとおもったんだよー、帰ってきてくれて助かったよ」 あいつ以前にもまして手がつけられなくなってなー、と史裕はこぼします。 「あいつ意地張って追わなくていいなんていってたけどさ、さんざん荒れまくって、 まあ、とにかく行って声をかけてきてくれないか、と頼まれ、拓海はあれよあれよという間に 「それじゃあ、頼むよ」 そう言って押し込まれた部屋の奥、天蓋つきベッドの向こうには、文字通りふて寝している
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