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―――Milky Way―――
「おまえ、いっつも同じよーなヤツばっか着てるよな。今日はオレがコーディネートしてやる」
真っ先に連れて行かれたのはメンズ専門のブティック。啓介は勝手知ったるという感じで
店内の服を手早く見繕うと戸惑う拓海に次々と手渡す。啓介が選んだ服はどれも
拓海が普段着そうにない、こじゃれたデザインのものばかりだったが、
どれも不思議と拓海に似合っていた。
嫌いじゃないよな? と聞かれて頷くと、制止の声も聞かずにさっさとカードで
支払いを済ませてしまう。自分で払うといったが、「オレがおまえに着せたいから
やるんだよ。黙って受け取れ」と凄まれた。
以前同じようなことで大喧嘩したことがあった。その時は拓海が押し切って
自分の分は自分で払ったが、その後少しばかり気まずさが残った。
今日また同じ気分を味わいたくないので、ここは啓介の好意を受け取ることにした。
そして現在、二人は星空を模した店内で軽い食事を食べている。
拓海は先刻啓介が見立てたノースリーブのシャツと七分丈のパンツを着ている。
買い物して、映画見て、食事して。なんかこれってデートみたいだよなあ・・・
とぼんやりと考えていた拓海は、なんとなく感じる周囲の視線に、
床まであるガラス窓の向こうに意識を逃した。
刻々と暗くなっていく外を歩いている人々は水槽の魚にみえなくもない。
この店に入ってから、なんだか知らないが注目を浴びているような気がする。
覚えのない視線ではない。啓介といる時はいつもこうなのだ。
(この人、どこにいても目立つからなあ)
待ち合わせの時は見つけやすくて便利だが、そういう男と一緒にいて、しかも
そういう仲だというのは気恥ずかしいというか、こそばゆい気がする。
当の啓介はそんな視線には慣れてしまっているせいか、まったく気にする様子もない。
「何だよ」
怪訝そうに聞かれて、いつのまにか啓介の顔をしげしげと見ていたことに気づいた。
慌てて首を振りながら、
(やっぱかっこいいよな)
心の中でつぶやきながら一人赤くなる。
そんな拓海は、啓介と一緒に自分も注目の的になっていることを、当然知らない。
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