顔を洗ってもなおすっきりしない様子の啓介は、仏頂面のまま、それでも黙々と拓海がつくった朝食を片付ける。
一緒に暮らし始めた当初は、それこそ朝食がまずいのかなどと心配になったが、単に寝ぼけているゆえらしい。
現に拓海の作ったものを残したことは、これまで一度もない。

「啓介さん」
「あ?」
「ついてますよ」

言いながら手を伸ばして啓介の口の端を指でぬぐう。そのままぺろりと自分の指を舐める拓海の動作に、
啓介はようやく機嫌を直したように笑った。