トーストを口に運ぶことすら億劫そうな拓海をよそに、
目の前に座っている啓介は上機嫌で朝食を平らげていく。
いつもは寝ぼけて不機嫌なことが多いのだが、ご機嫌の原因が原因なだけに
拓海の心中は複雑だ。

「やっぱおまえって料理うまいよな」
「トーストに上手いも下手もないとおもうけど・・・」

照れと困惑が半々で、拓海はあえて仏頂面でぼそぼそと反論する。
啓介はやわらかく微笑んで、拓海の口元に手を伸ばす。

「ついてるぜ」

拓海の口の端についていたジャムを指で拭うと、啓介はそれをぺろりと舐めた。
二人を包む甘くくすぐったい空気に、拓海は頬を染めて目の前のトーストに集中しようとした。

穏やかで愛しい朝のひとときが過ぎていく。