とりかえっこ
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「あっ…あんっ…!」 ジルとのセックスはいつだって気持ちがいい。 最愛の相手とひとつになれるのだから、嬉しいのはいうまでもないし、 物心ついた時から触れ合ってきた双子の兄弟だからか、身体の相性もばっちりだ。 最近では互いに恋人が出来て、隣の部屋とはいえ、寮の部屋も別々になってしまったせいで、 中等部の時のように毎日できなくなってしまったのが寂しくて切ないけれど、 抱きしめてほしくなると、ジルは口に出さなくてもそうしてくれる。 毎日抱き合えないから、余計に愛撫に敏感になっているのかもしれない。 だから最近ジルに抱かれる時はいつも、途中で我を忘れるくらいに快感に溺れてしまうのだけど。 その時はいつもと違う、不思議な感覚に包まれていた。 繋がっている部分からひとつに溶け合い、 ジルの心臓の鼓動、ジルがエアの中で感じている、締め付ける感覚や内部の熱まで、エアにはわかった。 「ぁっ…!」 たぶん、ジルも同じ感覚を味わっているはず。今、自分はエアでもあり、ジルでもある。 肉体を超えて、二人は互いの感覚を共有している。 彼は恍惚として、高みをめざして内部を擦り立てる、愛しい相手の背中にすがりついた。
「エア、大変だ」 いつの間にか気を失っていたのか、エアは強引に揺り起こされた。 「ん…ジル…」 まだ半分眠っているような甘えた声でエアは呟き、目をつぶったままジルの頭を引き寄せようとする。 いつもは優しいキスで起こしてくれるのに。 キスを拒まれ、しぶしぶ目を開けると、目の前にはピンクの髪に、夕暮れ色の目をした―― つまり、自分の姿があった。 「え…」 わけがわからず、目をしばたたかせる。 「…ジル?」 「そう、中身はね」 自分の顔をしたジルは、ため息をついた。 「その髪と目の色、どうしたんだ?」 まだわけがわからず、首を傾げていると、手鏡を渡された。 「僕だけじゃない。見てごらん」 鑑に移った自分の顔は、アクアブルーの髪にミントキャンディ色の瞳―― 自分とそっくりではあるけれど、ジルのものだった。 「何だよこれ…一体何が起こったんだ?」 もはや眠気やだるさなどどこかへ行ってしまった。 「エア、指輪を見て。それからこれ」 「っ」 何もつけてないはずの右耳にピアスがついている。その飾りを触られて、エアは首をすくめた。 そして手を見る。左手の薬指にあるはずの指輪がなくてどきりとした。 慌ててあたりを見回すが、ジルに右手を取られて、薬指に銀のクラウンリングが嵌っているのを見せられる。 ということはつまり。 「僕たちの髪の色や目の色が変わったわけじゃなくて、どうやら中身だけ入れ替わってしまったようだね」 エアの姿をしたジルが、ピンクの髪を揺らしながら、結論を導き出した。
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