とりかえっこ




混乱の嵐は次に、部屋を訪れたトォルとニィルを襲った。

「やあ、僕のかわいい駒鳥。君がいない間寂しくて凍えそうだったよ。

その愛らしい唇におかえりのキスをしてもいい?」

赤いシャツのボタンを珍しく上まできちんと止めた、ピンクの髪のシルフは、

ニィルを見るなりそう言って、返事を待たずにキスをした。

その光景にショックを受けたトォルは、蜂蜜色の髪をがしっと掴まれた。

「で、今日の戦利品は何だったんだ?ああ?」

思いがけない乱暴な行為に、トォルがおそるおそる見上げると、

こちらも珍しく襟元をはだけさせている、アクアブルーの髪のシルフが不愛想に見下ろしていた。

姿はジルなのに、とてもジルとは思えないぶっきらぼうな言動。

二人のノームは、戸惑ったように顔を見合わせ、そして様子のおかしい双子のシルフを見比べた。




「はぁぁ?中身が入れ替わったあぁ?」

とりあえず、ジルとニィルの部屋に集まって、主にジルが事情を説明した。

「何で突然、こんなことになっちゃったの?」

ニィルの疑問ももっともである。

だがまさか、セックスしていて入れ替わったなどとはさすがに言えない。

「ジル」が言葉につまっていると、「エア」が代わりに涼しい表情で答えた。

「さあ、僕たちにもわからないけれど。双子だから、こんなこともあるんじゃないかな」

何の答えにもなっていなかったが、落ち着いた口調でそう言われると、妙な説得力がある気がした。

感心する「ジル」とトォルを余所に、なぜかニィルだけは一瞬鋭い目で双子を睨んだ。

「そういうわけで、オレ達元に戻るまではこの身体だから、よろしくな」

「ジル」は話を切り上げるようにそう言うと、トォルの腕を掴んで自分たちの部屋に引き上げていった。




「ジル」に抱きしめられてキスされることに、トォルは最初、戸惑っていたようだったが、

エアと同じ口調、同じ仕草に、髪や目の色が違うだけだと納得したらしく、身体の強張りを解いていった。

二人はいつものように抱き合ってベッドに潜り込んだ。

氷属性のジルの身体で裸になるのは寒いらしく、エアにしては珍しくパジャマを着ている。

「でも意外に身体、冷たくねーのな。やっぱ中身はエアだからか?」

パジャマ越しに感じる「ジル」の身体は、ほんのりと暖かい。

「ん?ああ…」

蜂蜜色の跳ねっ毛を撫でながら、「ジル」は言葉を濁した。

普段の自分の身体と比べれば、ジルの身体は十分に肌寒いが、

それでも今、比較的身体が温まっているのは、体液を交換したせいで、この身体の中に自分の――

つまり炎属性のスピリットが宿っているせいだ。

だがそんなことを恋人のトォルに言えるはずもなく。

「ジル」はただ、まあな、と答えて、トォルにおやすみのキスをしたのだった。





  

入れ替わり話って文章だとややこしいですね;
どっちがどっちだか、言っていることわかりますかね??;;
あとドラマCDでは双子は声が違いますが(そこが萌えなんですが!)、
実のところ双子の声は基本同じなんじゃないかなとおもったり。



妖精部屋