振り返り美人




「どうだ?」

こちらに背を向け、角帯を締め直していた鴆が、こちらを振り返った。

真新しい紗の長着を身につけた鳥妖怪を、リクオは言葉もなく見上げた。

明るい緑の瞳に緑の髪。

普段は藤色や、明るい色の長着を身につけることが多い鴆だが、

黒に近い濃紺の長着は、きっと似合うと思ったのだ。

予想以上に男前が上がった恋人の姿に、鼓動が跳ね上がった。

「リクオ?」

こちらを見つめたきり、何も言わないリクオに、鴆は怪訝な顔になった。

骨ばった手が頬に触れる。頬が熱くなっていなければいいがと思いながら、

ああ、と何とか声を出した。

「よく似合ってる」

極力無表情で言ったにもかかわらず、それを聞いた鴆はニッと笑った。

「なんだ、惚れ直したのか?」

自惚れるな、と言い返そうかとも思ったが、至近距離で見つめてくる緑の瞳は、

こちらの心などお見通しとばかりにきらきらと輝いていて。

ただ「馬鹿」とだけ呟いて、衣擦れの音と共に近づく唇に目を閉じた。





おわり



というわけで、今年の誕生日祝いは濃紺の紗の長着を…
とみせかけて、惚れ直したリクオ様をプレゼント(*^_^*)
鴆さんお誕生日おめでとうございます!



孫部屋