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近代国家の象徴のような都市、リヤド。巨大な碁盤目の中心にある宮殿の一角で、 ムハンマド・イブン・アブドゥルアジズ。今年で65歳にはなるはずだが、くっきりと 「君とは以前会ったことがある」 その古狸と、直江は差し向かいで座っている。ムハンマドはじっと直江を見て、 「もっとも王子としてではなく、外相代理としてだったが」 3年前、おそらく今と同じく「協定」を結ぶ目的でムハンマドはウバールにやってきた。 「貴殿をたばかるつもりは」 ムハンマドは手を膝の上で組み、しばし瞑目した。 「2億ドル出そう」 直江は目を見開いた。 「国境を接しているイエメン、オマーン。そして独立したばかりの首長国連邦。 つまり、軍事費を出してくれるというわけだ。その金でアメリカから武器を買えと 「それで・・・援助の見返りに何を求められる」 法外な申し出に、冷静にたずねる直江に、ムハンマドは協定の概要を語る。 「とてもありがたい申し出ですが」 すべてを聞いてから、直江は静かに切り出した。 「我が国には近隣諸国にまで口出しをする余裕はありません。軍隊はもちろん 大国におもねることなく。強国に首根っこをおさえつけられるでもなく。 もともと、いつつきるかわからない石油収入に、頼ることをよしとしていない直江だ。 ふむ、とムハンマドはひげを撫でた。断るとはおもっていなかっただろうが、 「あまりかしこいとは言えないな。長いものには巻かれろというぞ」 にこりと微笑む表情には、なんの邪気も含まれていないように見える。 「わかった。君が大人になるまで待つことにしよう。だが我らがアラブが危機に 直江は少し間を置いてから、ところで、と話を切り出した。 「以前あなたのお父上が討伐された邪視教団――彼らに何か ぴくり、とムハンマドのひげが動いた。 「奴らは討伐された」 一見突飛で強引と思える直江の結び付けに、ムハンマドは眉をひそめた。 「ばかな。彼らは東洋人なぞ攫ったりしない」 邪視教団が復活したのであれば、信者は十中八九、アラブ人だ。 「わかった。こちらでも調査させよう」 直江の言う「関連性」の真偽はともかく、反乱分子の芽は早めに摘み取っておく 会談は終わった。立ち去り際に直江はふと、ムハンマドを振り返る。 「イスラエルの件――あれは、あなたの正義に反しないのですか」 イスラエルに資金援助をしているアメリカに協力を仰ぐのは果たし「正義」なのか、 「何、今に我々の言葉に耳を傾けざるをえなくなる」 時期を待っているのだよ。かっかっと笑う古狸の笑い声を背に直江は部屋を後にした。
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悩みながら第二部開始・・・サウジ国王はあえて名前変えました(小心者)。
会談の内容は適当に読み流して(え?)
フィクションということで大目にみてやってくださいませ;;