「陛下、お支度は――!」

ばたばたと忙しなく部屋に入ってきた老人は、その皺に囲まれた
目に主の姿を映すなり、絶句して立ちすくんだ。

「お――おおお・・・ッ」

いきなりわなわなと震えだしたウマルに、直江は急いで医者を
呼ぼうとした。
が。どうやら具合が悪いわけではないらしい。怪訝な顔をした
直江に、ウマルはやおらひざまずいた。

「ウマル?」
「失礼を・・・しかし、亡き父君がこのお姿をご覧になったら
どんなにお喜びになったかと・・・!」

感極まって泣き出す老臣の肩を、直江は困ったようにぽんぽんと
叩いた。

別にそれほど華美な格好ではない。ただ各国の指導者たちと会うのに
恥じないようにと(他でもないウマルの命令もとい進言で)、衣装を
整えただけだ。もちろん頭布も上衣も上等なものだし、縁には金糸の
刺繍も入っている。肩帯にはさりげなく宝石が縫いこまれていて、
腰に刺した三日月刀には繊細な金細工がほどこされいた。

「父上がそれほど子煩悩だったとはおもわないが・・・それに、
喜んでいる場合ではないだろう。」

直江の母のことは生涯想っていたらしいが、父親の身分のために
生まれる前から命を狙われ続けた身としては、自分が父親に愛されていたか
など、考える気すらおきなかった。だが長年先国王に仕えていた
ウマルは、彼が一番愛していたのは直江の母と直江だったと、
ことあるごとに主張した。

だが、泣きむせんでいた老臣も、直江の言葉に事態を思い出したらしい。

サウジアラビアの首都リヤドで中東会議が開かれることになった。
議題はおそらくイスラエル軍の侵攻と、それを支援している勢力への「対処」。
直江が即位してからこれまでの会議や会談は、たいていウマルや他の大臣が
出席していた。
だが今回出席するのは皆指導者クラス。代理を立てるわけにはいかない。

国王として、初めて並み居る指導者たちと顔をあわせることになる直江に、
ウマルは心配顔だ。

「陛下、やはり私も一緒に」
「おまえまでいなくなったら国が混乱する」

会議の内容が内容の上に、「招待」までされている身ではいつまで拘束されるか
わからない。国内は今は安定しているが、さまざまな部族を抱えているこの国は
決して「楽に治められる」国ではない。
直江はウマルを立たせて安心させるようにひとつうなずくと、長衣の裾を翻して
入り口に向かった。

「では行って来る。留守の間、よろしく頼む」

国王と呼ぶにふさわしい風格をそなえたその後姿に、ウマルは恭しく
礼をとった。

「陛下こそ、お気をつけて・・・!」

 

つづく
アサシン部屋

 


ああ、こーいうことかくと無知を暴露しそうでこわいよう〜〜〜(>_<)
でも直江を(公用で)国外に出したかったの(爆)
というわけで、「直江、初めて国際会議に出る」です(~~;)
へんなところは・・・こっそりおしえてくだしゃい(小声)