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悪い夢を見ているようだった。走る足元が次々と銃弾で抉られ、 「止まるな。走れ!」 少しでも足が遅くなると高耶は振り返ってそういった。高耶は 進むにしたがって通路は広くなり、追っ手の数も多くなってきた。 「ここにいろ」 マガジンを替えながらそう言うと、大きな通路に戻っていった。 やがて、銃声が止んだ。耳をそばだてて状況をつかもうとしながら、 どうして――嫌な予感に心臓の音がドクン、と鳴った。 何で来てくれないのだろう。早くここをでなければ、きっと新しい 彼は何をしているのだろうか。まさか撃たれて動けないのだろうか。 「由比子」 いきなり頭上から声をかけられ、由比子は飛び上がった。 「すぐに追っ手が来る。行こう」 立ち上がりながら、反射的にその手を取った。由比子より大きな、 その手を取った時、ぬるりとした感触が由比子の手のひらに伝わった。 「あなた、怪我したの!?」 ぎょっとして繋がれた手を見ると案の定、高耶の手首から先は血で 高耶は最初、怪訝そうな顔をしたが、由比子が見つめている先を 「・・・いや」 短く否定して、なぜか繋いだ手を解いてしまった。
層と層の間を隔てる扉。この層には儀式に必要な「巫子」や「殉教者」を 『キーヲ入力シテクダサイ』 その扉が、いまや高耶の操作で開けられようとしていた。岩壁そのもののような 『網膜チェック カンリョウ』 高耶が何をしているのか、こちらからは見えない。扉の周りにうつぶせに ヴ・・・ンと機械的な音を立てて、扉が開いた。向こうに広がるのは、今までと同じ 高耶は由比子の注意がこちらに向いていないのを見計らって、手に持っていたもの――
先の見えない暗闇が怖いという、由比子の感覚は的を得ていた。 「伏せろ!」 高耶の銃口が立て続けに火を噴く。待ち伏せしていたのか、暗がりから次々と 「ここで待ってろ」 いうなりこちら向かってくる者たちを確実に倒していく。だが双方から囲まれて、 「!」 死角から伸びた錆びた鉄の鎖に首をとられた。高耶の足が浮き、ぎりぎりと締め付けられる。 「ぐ・・・うッ」 高耶の右手からベレッタが落ちる。気管を圧迫され、意識が霞みかける。 「ギャァッ」 左目に深々とナイフを突き立てられて蹲る男に止めを刺すなり、返す刃で 「グゥッ」 鎖は生き物のように男の首に絡みつく。傾ぐ頭を押さえつけ、鎖を持つ手を思い切り引くと 「ヒィッ・・・た、たすけ」 残る一人に高耶が目を向ければ、その男は座り込んだまま後ずさった。 次の瞬間、心臓の位置に背中から深々とナイフを突き立てられた男は、声もなく倒れた。
ベレッタを拾い、由比子を残してきた場所に目を向けた高耶は、己の失態を悟った。 「・・・見てたのか」 蹲っておびえているとばかりおもっていた由比子は、目を見開いたまま、その場に 高耶が横で銃を使っているのはもちろんわかっていた。おそらく何人かは死んでいる だが、由比子は今、目の当たりにしたのだ。自分と行動を共にしているこの男が 「由比子。時間がない」 促すように一歩近づく高耶に、由比子はびくりと後ずさり、首を振った。 「由比子」 やっと出た声はかすれていた。 「どうして殺したの?その人、助けてくれって言ってたじゃない。逃げようとしただけなのに 高耶は答えない。顔色も変えずに腕をつかもうと伸ばした手を、由比子は思い切り 「由――」 高耶のそばで嗅いだ血臭と、差し出された手が血に染まっている意味を。 「・・・人殺し!」
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あー・・・。やっと更新できたのに、なんかコメントに困る展開・・・(~~;)