The Terrorist
4
廊下に出ると、女に呼び止められた。ドアの中から顔を出したのは、裸身に
そのままガウンを羽織ったグエンダ――大統領の姪にあたる人物だった。
長い亜麻色の髪は今はしどけなくおろされて、胸元で渦をまいている。細い
色白の腕で首を引き寄せられ、今夜何度目かわからないキスを交わした。
「つれないのね…私を抱きながら誰のことを考えていたの?」
おもいがけない言葉に、高耶はおどろいて相手を見た。議員のひとりを夫に
持つ彼女は、さしてプライドを傷つけられたという風でもなく、いたずらっぽく
笑って高耶を見ている。
「アノ時のあなた――すごく熱くてセクシーだったわ」
「グエンダ・・・」
困ったように何か言おうとした高耶を、彼女はやんわりと遮った。
「いいのよ、お互いさまだもの。あなた、気にいったわ。例のこと――
今日は来ていなかったみたいだけど、 パーティには自由に出入りできる
ようにしてあげる」
グエンダに妙なことを言われて、心が少し波立っていたのかもしれない。
もうとっくに深夜はまわっていただろう。気だるい身体を抱えて自分の
部屋がある階に上り、誰もいない廊下を歩いていた時、背後から伸びる
手に、高耶は直前まで気がつかなかった。
「ッ!」
有無を言わせぬ力で背後に引かれ、大きな手で首を掴まれ、いつの
まにか正面に迫っていた壁にぶつけられた。その勢いで頭を酷く
打ちつけ、衝撃に気が遠くなりかけた。
「グ…ゥ」
めまいと吐き気に抵抗どころか誰何の声もでない。今の高耶は完全に
無防備だ。
「よくも…」
耳鳴りの向こうから押し殺した低い声が聞こえてくる。
「――よくも、私の顔に泥を塗ってくれましたね」
首を掴まれ壁に縫いつけられているので、高耶は振り向くことさえ
できない。混濁しかけた意識の中で、高耶は必死に声の主を
割り出そうとした。こんな声、聞いたことがない。高耶の記憶にある
人物はこんな声を出したりはしなかった。
「不義を働いた女は八つ裂きにされたって文句は言えない。あなたは
アラブの男の誇りを土足で踏みにじった…!」
「直…江?」
かろうじてたずねた高耶に、直江はフンと鼻で笑った。
「どうやら、自分の主人の名前だけは覚えていたようですね」
「なっ…誰が…!!」
身を捩った途端に、鎖骨のあたりに冷たいものが当たり、ちくりと痛みが
走った。
「動くと怪我をしますよ」
男は冷たく言い捨てるとシャツの間に差しこんだそれを一気に下に
下ろした。いくつものボタンが切られて勢いよく弾け飛ぶ。曲がった
切っ先が襟もとを捕え、ホワイトタイを抜き取った。ズボンのボタンも
切ったそれはザクリと音を立てて、高耶の顔の真横に突き立てられた。
アラブ人が腰に下げている、小型の三日月刀だった。その鋭い輝きに
高耶の思考は急にクリアになった。
「やめろッ――ここをどこだと…!」
抵抗するが、身体をうつ伏せに壁に押しつけられていてびくともしない。
直江は構わず高耶のトランクスをひきおろした。首筋に噛みつき、
熱い切っ先を何も施していないその部分にあてる。
「どうやら自由を与えすぎたようですね…二度と忘れないようにして
あげる――あなたは俺の“女”だってことをね」
厚い掌で口を覆い、一気に貫く。
絶叫は手の中に消えた。
<アサシン部屋へ>
みなさま、ホテルの廊下は公道と同じですvくれぐれもマネしてはいけませんvvv
ものの本によれば、アラブ男の最大の誉れは妻の貞節を守ること。最大の屈辱は
妻が不貞を働くこと、なんだそうです…。直江は外見も生まれも育ちもえげれすですが
中身はしっかりアラブ人のようですvvvさて…こっからどうすっかな…vええと。
次回から当分続くであろうきっちーえろえろを読んでやろうといってくださる方は
裏にまわっていただけますか?vvvすみませんん〜vvv