The Terrorist

5

 

「…ゥ…ッ!!」

 

熱い凶器に肉を裂かれる衝撃に、高耶は大きく目を見開いた。
逞しい腕で腰を押さえつけられ、間髪を入れずに楔を打ちこんでくる。
突き上げる激しさと熱さに、痛みを感じる間もなかった。

押しこまれる度に上がる悲鳴が、厚い掌の中で奇妙にくぐもっては消える。
やがて抽挿を繰り返すうちに、潤してもいないソコがかすかに湿った音を
立てるようになった。
鉄分を含む匂いがツンと鼻をつく。剥き出しにされた内腿に鮮血が真紅の
筋をひいた。肉を割り裂く熱棒の勢いは激しくなる一方で、 高耶は嵐に
揉まれる小船のように揺すぶられるがまま、固く目を閉じて繰り返し襲い
来る衝撃と痛みをじっと耐えていた。

目を閉じてしまえば、ここがどこかという意識もない。感じるのは奥を割り
裂かれる衝撃と肉を打ちつける音、そして自分と男の獣のような荒い息
遣いだけだ。霞みがちになる意識の中で、それらだけが確かに存在している
ものだった。

「…私が憎いですか…?」

荒い息を吐いて律動を繰り返しながら、直江が掠れ声で聞く。

「殺したいほど、私が憎い?」

そんなこと、答えは決まっている。だが高耶は答えられない。
そうさせている直江も答えは期待していないようだった。
痛みに耐えるように眉を寄せると、より一層激しく突き上げ始める。

「殺したいなら殺せばい。あなたになら殺されたってかまわない」
「ッ…ンゥッ…!」
「だが俺が息絶えるその瞬間まで、あなたは俺のものだ。いや、
死んでもなお、俺はあなたを縛り続ける。この身が滅びても、永遠に。
あなたを絶対に離しはしない…!」
「ゥ…ァア…ッ」

閉ざされた瞼から新たな涙が流れた。繰り返し内部に押しこまれる
肉棒以上に、心の中ににねじ込まれる男の情動の熱と質量に、
高耶は今にも押し潰されそうだ。男の所有欲は本物だった。
ほとんど狂気としか思えない。こんなばかげた熱情を自分なんかに
ぶつけてくるなんて、この男は本当に気が狂っている。
男が注ぎこんで来る熱量は、高耶に奇妙な息苦しさと痛みを与えた。
まともに受ければ押し潰されてしまいそうな、内壁など一瞬で
どろどろに溶かされてしまいそうな欲望の塊を、どこかで悦んで受け
入れいている自分があった。なんなんだろうこれは。この男の狂気に
触れて、自分までおかしくなってしまったのか。
高耶は今まで一度も感じたことのない感覚を、男が与える仕打ち
以上に持て余していた。

 

衝撃と苦痛に、しだいに別の感覚が混じりはじめた。
その時、廊下の向こうでしたかすかな物音に、高耶ははっと身体を
強張らせた。
小さな機械音と電動のドアが開く音。エレベータが到着した音だ。
(誰かがくる――!)
直江も気づいているようだ。激しかった動きが緩やかになった。
コツ、コツ…
靴音がこちらに近づいて来る。高耶は焦って身を離そうとした。だが
直江はそれを許さない。

「離せ…っ」

直江は暴れる高耶の腰をぐっと引き寄せ、ことさら深く挿入する。
思わず高い声を上げそうになって、高耶はきつく唇を噛んだ。
ゆるやかな抜き差しに、いやらしい濡れた音がことさら大きく聞こえる。

廊下の角から黒い革靴の先が見えた。高耶の息が止まる。
今日のパーティの客の一人か、黒いスーツにホワイトタイをしめた
紳士はしかし幸運なことに、こちらとは反対側に曲がっていった。

揺さぶられながらちいさく安堵の息をつき、熱で潤んだ目でその背中を
見送る。

その時、何を思ったか、直江がいきなり激しく動き出した。

「…ッ…ァッ…やめ…ッ」
「こんなに感じているくせに…今さら常識人ぶるのはよしなさい。
今だってほら・・・見られるかもしれない期待にこんなにはしたなく
ひくついて 」
「ヤ…ァッ」
「前なんか触れてもいないのにぱんぱんだ。後ろを擦られるのが
気持ちヨくていっぱい涙を流してる 」

まだ客は部屋についていない。ちらとでもこちらを振りむいたら
おしまいだ。わざと高耶の弱点を突くような動きに、こみあげる嬌声を
必死に押さえる。腰がグラインドする度に、いつしか固く反りかえって
いた高耶自身がざらざらとした感触の壁紙に擦りたてられ、先端から
しろい滴を零していた。

客がドアの一つの前に立った。顔を半分こちらに向けて鍵を開けている。

「ほら…行ってしまいますよ。あなたの恥かしい格好、あの人にみて
もらわなくてイイの? 」
「ッ…ンゥ…ッ…!」

激しさを増す攻勢に、高耶は祈るように声を殺した。
ドアが開けられ、バタンと閉じられる。

「ァ――アアアッ…!」

とたんに我慢できなくなって、高耶は突き上げられるままに声を上げた。
激しい責苦に悶える、その悲鳴はどこか甘美さを含んでいる。

――熱い…アツイ…!
すでに思考を熱で溶かされていた高耶は、身体の奥に注ぎこまれる
熱い体液を感じながら、自らもまた放っていた。

 

 

つづく

もどる


・・・あれ?途中からきっちーじゃないよv高耶さん、気持ちよがってちゃだめぢゃん(爆)。
まあとにかく、もうちっと続きますvv