The Terrorist

7

 

照明を落とした部屋の中で、二人はひたと見つめ合う。
一人は身体より後ろに手をついて、ゆったりと足を伸ばしている。
その薄茶色の瞳には僅かにおもしろがるような表情が見え隠れ
していた。

もう一人は男の足を跨ぐ形で膝立ちになり、男の身体に半ば
覆い被さるように両脇に手をついている。男をひたと見つめる
瞳からは表情は読み取れない。怒りを感じているわけでも、
むろん媚びを売るわけでもない。底知れぬ昏さを持つ漆黒の
瞳を、夜の湖面のように、ただ、光らせていた。

どれくらいそうして見つめ合っていたのか。ついと、高耶が
首を伸ばした。僅かに首を傾け、唇を薄く開いてゆっくりと
直江に近づく。瞼を半ば閉じ、しかし光る目で直江を見据えた
まま、唇を寄せていく。直江は高耶の様子をじっと見ている。
だが瞳からは、おもしろがる色は消えた。


まずかすかな吐息が触れ、唇が重なる。最初は啄ばむ
ように、そして次第に深く。時折角度を変え、唇を離すごとに
吐息の温度を上げながら、ゆっくりと男の身体をベッドに
押し倒した。

 

 

――明日、あなたをマグゴーマンの屋敷に連れていって
あげますよ。
実戦慣れしたガードマン、バラ線に高圧電流が
流れる外壁、よく訓練された獰猛なドーベルマン、監視カメラ、
赤外線警報装置まであるそこは、だが私といっしょなら堂々と
正面から入ることができる。マグゴーマンその人に会い、
ディナーを共にし、「友人」になることができる。それに…そう。
彼の屋敷から、IRAの秘密基地に通じる入り口があるんですよ。
知っているのはマグゴーマンと――私を含めるほんのひとにぎり
の人間だけだ。知りたいとはおもいませんか?

知りたいなら、教えてあげる。
ただし――俺を満足させられたら、ね。

あなたには簡単なことでしょう?
グエンダを満足させたように、この俺を夢中にさせれば
いいのだから…。

 

 

甘い吐息をつきながら、高耶の掌は男の逞しい胸のあたりを
さまよった。喉仏にざらりと舌を這わせ、筋肉の境界線にそって
下降していく。男の欲情を煽るというよりは、男に愛撫をねだる
動作だった。舌や手を這わせながら、動かない男の身体に
しきりに自分の身体をこすりつける。淫らな腰が揺れる度に、
高耶の勃ちあがりかけた分身が、直江のそれを刺激する。

「は…ァ」

腰が密着する度にかすかなため息が漏れる。ぴんと勃ち
あがった胸の粒で直江の胸を擦りながら、高耶は濡れた目で
直江を見上げた。いとおしむように胸から脇腹にかけての
筋肉を撫で、腰を振っていると、擦られている直江のそこが
みるみる質量を増してきた。

「あ…ぁあん…」

直江が変化する様子を自らの分身で感じて、高耶は満足そうに
声を上げる。先刻までの――いや、直江がいままで知っていた
高耶とはまるで別人だ。直江は目をみはった。つい先刻、直江に
銃口を向けていたことも、殺気さえこめて睨みつけていた
眼光も――今は片鱗もみあたらない。ここにいるのは男のアレを
心底欲しがっている、根っからの娼婦だ。

直江のものが完全に勃ちあがると、高耶はそこに顔を寄せ、
唇を近づけた。先端を尖った舌先でぺろりと舐める。そのまま
まわりをなぞるように舌を這わせる。好物の食べものの味を
検分するように溝や血管に丁寧に舌を這わせ、双球との境界や
茂みに隠れたところまでぴちゃぴちゃと舐めあげた。そうしている
間に滲み出てきた先端の液を舌先で掬いとり、さんざん舐め
あげたそれを口腔いっぱいに含んだ。

直江の表情が苦しげに歪む。以前無理やり奉仕させた時とは
比べ物にならなかった。ざらりとした舌に巧みに追い上げられ、
直江を急速に快楽の頂点へと押し上げていく。

「ッ――待っ…」

慌てて高耶の髪を掴んだが引き離すことができず、貪欲に扱き
上げる高耶の舌に導かれるまま、直江は彼の口腔に欲望を
放出した。

 

「ン…」

直江の精液を喉をならして飲みこむと、 それだけでは足りないと
ばかりに直江の右手を取り、関節のしっかりした長い指を口に
含んだ。恍惚とした表情で関節に舌を這わせる。満足するまで
しゃぶり終えると、それを下から高耶の秘所へと導いた。唾液で
しっとりと濡れた指先を入り口に這わせると、その部分がもの
欲しげにひくついているのが指の腹を通して感じられた。指が
乾くとしゃぶり直し、再びそこにもっていく。

「ん…ふ…っ」

自ら直江の指を入れた時、高耶はすこし顔を顰めたが、その
少しつらそうな表情さえもが扇情的だ。涙を溜めて切なげに
直江を見ながら男の指を奥へと挿入していく。中指を付け根まで
含ませると、ゆっくりと抜き差しを始めた。指の動きに合わせて
熱く熟れた内部が収縮した。ねっとりと絡みつく襞の感触を
楽しみながら指先にわずかに力をこめると、高耶の身体が
びくりと跳ねた。ちょうど弱点をついたようだ。
2本、3本と自分で指を増やしながら、高耶は淫らに腰を振った。
はやくほしくて堪らないというように、切なげに息を弾ませ、
ねだるように直江を見ている。

ねえ、高耶さん…、とそれまで黙っていた男が囁きかける。

「後ろを向いてくれませんか…あなたの下のおくちがどんな風に
俺の指を飲みこんでいるのか、みせて?」

高耶は羞恥に頬を染めると、直江の言葉に従った。一度指を
引き抜いて身体の向きを変え、形のよい双丘を直江の目の前に
晒す。左手の親指と人指し指で秘所を広げ、反対の手で直江の
指を挿入していく。柔らかく綻んだ蕾が自分の3本の指を飲み
こんでいく様子を、直江はじっくりと眺めることができた。そして
出し入れする度に蠢く入り口と、そこがたてるくちゅくちゅと濡れた
いやらしい音、少しでも快感を得ようと貪欲に揺れる腰も――

高耶は腰を振りながらふりかえり、熱で潤んだ目で直江に哀願する。
それは口にするより雄弁に、彼の望みを訴えていた。
はやく、おまえのをイれたい…と。

直江が指を抜くと高耶は再び正面を向き、大またで直江の腰を
またいで膝立ちになった。雄雄しく勃ちあがった直江の怒張を
熟れきった自分の秘部にあてがった。

「んっ…」

眉を寄せながら少しずつ中に収めていく。先刻の行為が響いて
いるのか、さすがに少し辛そうだ。だが少しずつ腰を落とし、全てを
納め切ると、ほっと息をついた。一度ぎゅっと内部の肉棒を締め
つけると、ゆっくりと動き出した。

「ッ…アッ…アン…ア…ッ――」

規則的な律動とともに、奔放な嬌声を上げる。足を極限まで広げ、
身体より後ろに手をつき、直江に繋がっている部分を露にして
しなやかに腰をグラインドさせる。首を反らせ、ヨくてたまらないと
いうように顔を仰のかせる。狭く熱い内部は、直江から一滴残らず
絞り出そうとでもするように、すごい力で締めつけてくる。細い腰は
疲れを知らぬかのように、ますますピッチを上げていく。

「ァンッ…ァアンッ…」

淫らなポーズで存分に直江を貪った後、上体を前に傾けてまた
腰を振り出す。二人の目が合った。お互いの瞳の中に紛れもない
快楽の色を確認して、荒い吐息を貪りあった。

シーツを掴んでいた直江の手が高耶の腰を掴み、荒々しく高耶を
組み敷いた。我を忘れたように楔を打ち付ける直江の猛攻に
高耶は濡れた悲鳴を上げる。
今や直江は完全に高耶の中に溺れた。
狂ったように腰を動かし、無心で絶頂への階段を駆け上り――
高耶のひときわ高い嬌声と共に堕ちていった。

 


つづく

裏十字へ
表小説のぺーじへ


というところで次は表にもどります。
え?少ない?((((^_^;)…でもいつまでも裏だとハナシ進まないのですようぅ〜vvv