The Spell

直高出て着ませんですvvvだから序;;


神々が槍でグルヴェイグを突き、

ハールの館で焼いたときが、この世の戦の始まりであることを、

わたしは知っている。三たび焼いたが三たび生まれかえり、

何度もくり返したが、まだ女は生きている。

                          ――エッダ、「巫女の予言」

力尽きて、深いまどろみの沼に沈んでいこうとする意識を、何かが阻んだ。

このまま眠りたかった。心地よい眠りの沼の底で、二度と目覚めなくても

かまわなかった。生まれつき病魔に蝕まれた身体だ。目覚めている時は

いつでも苦しい時だった。直接陽にあたることのない身体。毎日眺めている

病室の天井、肉の薄い腕に刺さった太い管、毎日私を診る白衣の人たち、

父母や姉の悲しい表情――

他の人に比べれば、まだそんなに生きてはいないかもしれない。

だけどもう――とても、疲れてしまった。

自分の意志で動かぬこの身体にも、誰かを悲しませることしかできない

自分自身にも。

だからお願い。もう眠らせて。

そう望んでいるのに、眠りを妨げる声は止まない。

――声?

そう、言葉の意味はわからない。経のようにも聞こえる。

だが絶え間なく続くそれは、眠りにつこうとしている魂を明らかに

邪魔していた。

二重になり三重になって聞こえてくる、いつ止むともわからない

低い音の奔流と共に、闇が魂のなかに入り込んでくる。

特定の意志を持った闇は疲れた魂を侵し、喰らい、宿主の悲鳴も

弱々しい抵抗もものともせず、魂全体に闇を取り込み始める。

嫉妬、憎悪、欲望、そして生への凄まじい執着。

宿主を得て膨れ上がった激情は、魂を得体の知れないモノへと変容させる。

生の理を壊すモノ。

人であって人でない、人外のものへと――

続く

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