The Spell

15


    

 

 

「来いよ、直江」

 

しっとりと濡れた声が直江を誘惑する。
しどけなく開いた足の間でいやらしく動く手、なめらかな肌の上を這い回るもう片方の手よりも、
厚めの唇から漏れるあえかな嬌声よりも、涙を溜めて直江を糾弾するその瞳が直江の心を揺さぶった。
あの瞳には抗えない。
あくまで服従を強いる裏側で、絶えず慟哭し続けるあの孤独な瞳を前にしたら、もう膝を屈するしかない。

だが今の直江にとって、高耶の誘惑は死の誘惑だった。

 

(あれは汚してはならないもの)

(この不浄の手で触れてはならないもの)

(もしこの《戒律》を破るくらいなら)

(生きる価値などない)

(死になさい)

 

加護を受けているはずの毘沙門天の炎が、地獄の業火となって直江を苛む。
あの日以来直江の中に棲みついた《声》が、高耶に一歩近づく度に気が狂いそうな勢いで警告を繰り返す。
耳鳴りがひどくなり、高耶の姿にこちらをじっと見つめる人形の姿が重なった。

 

「直江」

 

逡巡する直江をじっと見上げて高耶が呼ぶ。
仰向けに倒れ、ジーンズと下着を足元にひっかけた状態で足を開いていた。前だけの刺激では物足りなく
なったのか、先端が濡れた分身を扱きながら後庭に指を抜き差ししている。
艶かしく腰を揺らめかせながら早く来い、と直江を煽る。

直江は目を閉じた。
恨みのこもった人形の目が、視界いっぱいに広がる。

(彼を穢すくらいなら・・・)

(うるさい――)

たとえ狂い死にしようと、目の前のこの孤独な魂を放っておくことなどできない。
以前の景虎だったなら、見守るだけの優しい愛情をきっと求めたかもしれない。
今の直江を歓迎したかもしれない。
だが二人の関係はあの時とは違う。景虎も、そして直江も変わった。
一度深く交わってしまえば、もう後戻りなどできない。精神的なクリーンな関係では二人とも満たされない。

(俺たちは生きているんだ)

頭の中でヒステリックに喚きたてる《声》を無視して高耶に覆いかぶさった。
直江の指先に敏感に反応する、吸いつくような肌の感触が電流のように背筋をはしった。

「あ――なお・・・ッ」

喘ぐ高耶に文字通り貪りついた。
荒々しく肌をまさぐり、ペニスを咥えこみ、舌で扱きたてる。
あっという間に迸った甘露を喉を鳴らして一滴残らず飲み干し、身体を返して獣の体勢を取らせた。

余裕などどこにもなかった。

「ア――アアアッ!」

熱く蠢く内部に、硬く猛った肉棒を一気に突き入れ、激しく揺さぶった。
高耶は地面に片頬を押しつけながら感じ入った声をあげ続ける。

 

 

 

今、自分たちは誰よりも深く繋がっている。
たとえ神聖を穢した代償が死の報いであっても――

それはなんと甘美な罪の果実なのだろう。
            

 

続く

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嗚呼・・・ティッシュよりぺらい直江の理性・・・