緋襦袢で四十八手
32. 二つ巴(ふたつどもえ)
鴆が柱を背にして立ち、膝立ちになったリクオは促されるままに、目の前に突き出された昂ぶりを口いっぱいに頬張った。 教えられたとおりに舌を這わせれば、大きな手がねぎらうように髪を撫でた。 「すげーいいぜ、リクオ…そのままこっちを見ろよ…」 少し掠れた声に応じて目だけを上げれば、熱を湛えた緑の目とかちあった。 本当は男に奉仕しているところなど見られたくないのに、目を逸らすたびにこっちを見ろと促される。 癪に触って睨みつけてやったら、鴆の欲望を露わにした瞳が絡みつくようにリクオを捉えて。 意外に余裕のない表情に、自分がこいつにこんな表情をさせているんだと思えば、鼓動が高鳴った。 鴆の舌遣いを思い出しながら、裏筋やくびれを擦り、茎全体に舌を絡め、口全体をすぼめて強く吸う。 鴆が息を詰めるのを見てほくそ笑んだ。 だがいつまでもリクオに主導権を握らせておく男でもない。 「腰が揺れてるぜ…欲しいのか?」 指摘されて、リクオは雄を頬張ったまま、顔を熱くした。 雄々しく脈打つ肉棒に舌を這わせているうちに、勝手に自分の分身も脈打ち、後口までもが疼き出している。 今にも襦袢の裾をかき分け、自分の手を添えてしまいそうだった。 鴆は絹糸のような銀糸をもう一度撫でると、リクオの顔を離させた。 リクオの唾液で濡れた分身は、はちきれそうにそそり立っている。 「あんたの顔が見られないのが残念だが…一緒に気持ち良くなろうぜ」 オレの上に跨れ、違う逆、と指示されながらも、褥に寝そべった鴆の上に脚の方を向いて跨り、 己の唾液で濡れた鴆自身を再び咥えた。 その時。 「んんっ…!」 放置されたまま、痛いほど張りつめたリクオ自身を下にいる鴆に咥えられて、リクオはくぐもった悲鳴を上げた。 思わず軽く歯を立ててしまい、鴆にも仕返しとばかりに同じことをされる。 抗議する間も与えられずに愛撫を与えられて、リクオはもう何も考えられずに、ひたすら口の中の分身に舌を絡めた。 (なんだこれ…こんなの知らねえ…) こんな快感は知らない。 慰めるのも慰められるのも気持ちよすぎて、今にも意識が飛びそうだった。 鴆は赤い襦袢の裾を割り、内腿の感触を愉しむように乾いた掌で撫で上げながら、リクオ自身に舌を這わせている。 鴆の口の中でリクオの分身は今にもはじけそうに脈打ち、腰がに揺れた。 未だに触れられていない秘孔までもが、愛撫を欲しがってひくひくと蠢いていた。 「んうっ…!」 突然、冷たいぬめりをまとった指が侵入してきて、リクオはまた歯を立てそうになった。 鴆はリクオを口で愛しながら、いつもよりやや無遠慮に、指で内部をかき回している。 もはや、自分がどんな格好で鴆に跨っているかなど、考える余裕もなかった。 前と後ろを同時に弄られたら、リクオはもう奉仕どころではない。 たまらず鴆から口を離し、訴えた。 「やっ…そんなにされたら…もう…ぁっ…」 言い終わらぬうちに、鴆の口の中ではじけてしまう。 粗相をしてしまったかのような羞恥と快感に頬が燃える。 搾り取るように精を飲み干され、気が遠くなりそうになりながらも、リクオは再び鴆のものを咥えた。 「おい…」 オレのはいいって、という鴆の制止も聞かず、根元を手で扱きながら、口をすぼめて何度も雄を強く吸った。 無心に舌と指を絡めていたら、そのうち鴆も腰を動かし始めて、 やがて低い呻き声と共にリクオ、と呼んで、リクオの口の中で果てた。 どろりとした濃い液体が、口の奥に注ぎ込まれる。 鴆がいつもしているように、先端に舌を差し入れて残りの滴まで舐めとっていると、身体を返された。 「まったく、あんたって人は…」 向かい合わせに抱きこまれ、口づけられる。 互いの精液の味に、どちらも顔を顰め、それを見てどちらともなく、くすりと笑った。 擦れ合った二人の欲望は、達したばかりだというのに、まだ熱く脈打っていた。 |
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