緋襦袢で四十八手
49. 結
溶け合うような情交の後、糸が切れたようにぐったりとしたリクオを、鴆はまだ繋がりを解かないまま、がしっと抱きしめた。 「すげー!全部制覇するなんてすげーよ!オレ皆に自慢してえ!」 子供のように顔を紅潮させ、きらきらした目で声を弾ませる。 毎晩のように赤い襦袢を着せられた上に、変な体勢やプレイを要求され、 中には苦行と言った方がいいものも少なからずあったが、鴆が喜んでくれたのならそれでいい。 ・・・それはいいが、喜ぶ前に抜いてくれ、と思う自分は薄情だろうか。 困惑しながらも疲れ果てて言い出す気力はなく、リクオは奥に鴆を宿したまま、 顔じゅうに降り注ぐ口づけを甘んじて受け入れた。 終わった後の、こんな風に甘くくすぐったい時間は、リクオも好きだ。 鴆はリクオの髪をやさしく撫でながら、気が済むまで口づけの雨を降らせると、上機嫌で後始末をし始めた。 四十八手とやらを完遂できたことがよほど嬉しいらしい。 リクオも恋人としての務めを果たせたことにほっとしていた。
ところが。 清めた身体を清潔な襦袢に包み、清潔な敷布に横たえながら鴆が言った言葉に、リクオは凍りついた。 「四十八手全部やった奴なんてそうそういねーだろうなあ。せいぜい五手とか十手くれえだろ。ほんとすげーよ!」 浮かれた気分のまま、隣に寝そべり、リクオの頬に触れた鴆は、その刃のように鋭い眼光にぎょっとした。 「てめー…恋人や夫婦なら誰でもやるって言ってなかったか…?」 リクオの言葉に鴆はさっと青ざめた。 うっかり口を滑らせたことを後悔したがもう遅い。 「あ、いや、それはだな…」 わなわなと震える身体から、小妖怪なら瞬時に消されてしまうほどの畏が、ぶわっと噴き出した。 「出てけー!!」
それから一週間、リクオは鴆と口をきかなかった。
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