愛は藍より深し
上品に透ける深い深い藍色の生地に、 リクオから贈られた夏大島の羽織を、鴆は満足げに眺め、それからいそいそと羽織った。 「似合うか?」 「ああ。やっぱりおまえは、藍色が似合うな」 髪や目の色と同じ緑でもいいが、それより濃い色の方がしっくりくる。 本人もそれはわかっているのか、手持ちの羽織は紺や藍色が多いような気がする。 「ありがとな、リクオ」 素直に喜び礼を言う鴆に、リクオはただ小さく微笑んで応えた。 「…っておい、もう脱ぐのかよ」 鴆はもらったばかりの羽織を衣桁(いこう)に掛けながら、眉を寄せるリクオにニヤリと笑って見せた。 「せっかくの羽織にシワをつけちゃあ、もったいねえだろ?」 リクオに近づくと羽織を取りあげ、部屋の隅に放り投げた。 「男が着るもんを贈るのは、それを脱がすためなんだってよ」 「…自分で脱いでりゃ世話ねえな」 傍に膝をつき、熱い吐息と共に請うように唇をついばむ鴆を、リクオは憎まれ口をたたきながらも、目を閉じ、唇を開いて迎え入れる。 八月十二日。藍より深い夜は、まだまだ続きそうだった。
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