愛は藍より深し
交わされる秘めやかな水音。帯を解き、衣を脱ぐ衣擦れの音。 お互いの吐息までも貪りながら、二人は夢中で舌を絡め合い、着物を脱がしあった。 もつれ合うように横たわり、組み敷く者と組み敷かれる者が、闇に光る眼で視線を絡ませる。 惹きあうように顔が近づき、再び唇が重なった。 濃厚な口づけにリクオがうっとりとしている間に、鴆は首筋に舌を這わせた。 鎖骨に歯を立て、乳首をいじったり吸ったりしつつ、唇と手は下へと向かう。 よどみない鴆の愛撫に、リクオはおとなしく身を任せていたが、鴆の舌が根元に触れると、途端に鴆の頭を引き離しにかかった。 「今日はオレの誕生日だろ。好きにしていいんだよな?」 どうせ却下されるだろうが、ちょっと困らせてやりたくて言ってみただけだった。 ところが、リクオはそれを聞くと意外にも、頬を染めてそっぽを向いたきり、おとなしくなった。 え、いいの?と思いつつ、陰茎に舌を這わせても、リクオは恥ずかしそうに目をつぶって耐えている。 (誕生日ってすげえ) あっという間に屹立した若い雄を頬張ると、リクオは身体を跳ねさせ、嬌声をあげた。 もしかして、今日は他にもいろいろお願いをきいてもらえるのだろうか。 鴆は生まれて初めて、自分の誕生日に感謝した。 「も…う、いいだろっ…」 獣の姿勢で尻だけを突き出した格好で、リクオは羞恥に震えながら声を振り絞った。 「うーん、もうちょっと…」 鴆は素知らぬ顔で、桜色の小さな入口を両方の親指でいっぱいに広げ、熱心に中を覗いている。 明るい月明かりのもとで、あんたの中を覗いてみたい、と鴆は言った。 当然リクオは躊躇したが、人払いはしてあるし誰も来ないと、あげくに誕生日にオレの望みを聞いちゃくれねえのかい、と言われて、しぶしぶ縁側で恥ずかしい体勢をとったのである。 言うまでもなく、二人とも生まれたままの姿である。 外でこんな体勢をとらせておいて、よく見えないからと、鴆は鬼火まで使ってリクオの中を熱心に覗きこんでいる。 その視線が熱く、痛い。見えなくても、鴆がそこを注視しているのが嫌というほどわかる。 鴆の緑に光る眼で犯されているような気がして、下腹が勝手に反応してしまう。 「綺麗なもんだな」 羞恥と興奮でひくひくと蠢く桜色の内部をじっくりと眺めた鴆は、感嘆したように呟いた。 うやうやしくそこに口づけ、次の瞬間、舌を入れて激しく愛撫しはじめた。 「あっ…あんっ…!」 そんな場所を口にするなんて、と普段ならつっぱねるリクオだが、顔を真っ赤にして拳を固めて耐えている。 めったに許されない行為を、鴆は堪能した。 舌を抜き差しして内壁の滑らかさを味わい、入口の形を確かめるようになぞり、強く吸った。 蝶が花の蜜を求めるように、鴆は執拗に入口に吸いついていたが、もっと奥への愛撫を欲して、骨の浮き出た腰が無意識に揺れ始めると、ようやく唇を離して、潤滑剤をつけた指を差し入れた。 「ぁあん…」 舌よりも奥に届く確かな感触に、リクオの喉から思わず甘い声が漏れた。 鴆の指が与える快感に、リクオの内部も、身体も、心までが蕩けていく様を食い入るように見つめながら、徐々に指を増やしていく。 抜き差しする鴆の指の動きに合わせてゆらめく脚の間では、我慢の効かない若い雄が屹立し、先端からとめどなく先走りの滴があふれては、揺れる度にぽたぽたと縁側に落ちた。 指を呑みこんだ入口からは、潤滑剤とリクオのエキスが混じった液があふれ出し、水音を立てて抜き差しされる度、引き締まった白い太股を伝い、筋をつくった。 鴆が指を引き抜き、猛り立った怒張をあてがうと、リクオがはじめて抗議の声を上げた。 「ここで…やんのかよ…ッ」 だがもう待てないのはリクオも同じはずだ。 鴆は先端を潜らせながら、愛しい頬に口づけた。 「たまにはいいだろ?妖怪らしく、本能のまま繋がろうぜ」 「ア…アアン…ッ」 部屋の外での行為に興奮しているのか、押し入ってくる鴆の欲望をいつも以上に締めつける。 いつも以上に乱れるリクオを、鴆は何度も体位を変え、吸いつくような粘膜を無心で擦りたてて拡げ、何度も欲望を注ぎこんだ。 両方の乳首をきつく摘みながら攻めたてると、リクオはそれだけの刺激で射精した。 理性を捨てた二匹の妖怪は、獣のように、空が白むまでまぐわい続けた。 その後。最中にリクオが気を失い、鴆も疲れ果てて寝てしまい、朝になって様子を見に来た蛙の番頭が、縁側と部屋の惨状に絶句することになる。 幸せいっぱいで眠っていた鴆が、昼の姿に戻ったリクオに叩き起こされ、怒られたのは言うまでもない。
|
||