あわよくばもう少し
1 雨の夜よりも少しだけ温度が上がった室内で、二つの身体が熱く湿った吐息と共にもつれ合う。 「なあ、いいだろ…?」 反り返った分身を根元から舐めあげ、先端からとめどなく滴る雫を味わいながら鴆が懇願する。 「てめー、卑怯だぞ…」 リクオは訴えるが、声に力は入らない。 あんたの嫌がることはしないと言っておきながら、この男は時々、ものすごく図々しい。 だが一番敏感な部分を舐められ、同時に乳首をきつく抓られれば、 耳にすることさえ忌まわしい願いも、強くはねつけられない。 だってよお、と鴆は分身に舌を這わせながら、その根元を撫でた。 まばらで柔らかい白と黒の下生えは、滴る先走りと鴆の唾液で、しっとりと濡れそぼっていた。 「オレもこいつは気に入ってるけどよー、根元を舐めると毛まで食っちまうし」 「んなとこ、舐めなきゃいいだろうがっ…」 羞恥にたまりかねて、男の頭を引きはがし、身をよじって逃れようとしたが、 男は難なく暴れる太腿を抱えて、抵抗を封じ込めた。 そのまま下からじっと見つめられて、あんたを隅々まで愛したいんだ、と真摯な声で言われれば、 無碍にすることもできなくて。 「な?もともと大して生えてねーんだし。剃ったらきっとすっきりするぜ?」 「喧嘩売ってんのか…」 流されそうになりながらもなかなか承諾しないリクオの後口に、薬液をつけた鴆の指がもぐりこんだ。 「あんっ…!」 「オレしか見ねーんだから、別にいいだろ?」 袋に歯をたてられながら奥を探られ、リクオの思考は快楽に霞む。 だがそれでも諾とは言い難かった。 「あっ…水泳の時、困んだろうが…ッ」 そう、今の季節は、水泳の授業がある。着替えでクラスメイトに素っ裸をさらす可能性のある、唯一の時期だ。 ところが、それを聞いた瞬間、鴆の目が物騒に光った。 「へえ…オレ以外の男に、あんたのここを見せるってわけかい。 …そういうことなら尚更、あんたははオレのもんだって主張しとかねーとな」 むくりと身体を起こした男の様子に、リクオは逃れられない自分の運命を悟った。
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