ご褒美だよ
1 薬鴆堂の昼休み。 鴆は私室にこもると、運ばせた昼食の膳を尻目に文机に向かい、両手に捧げ持っていた小箱をいそいそと開けた。 午前中に患者の一人から診察のお礼にともらったものだ。 中には作り物の猫の耳と、棒の先についたおそろいの尻尾、そして尻尾を遠隔操作するための器具がついていた。 その器具のぼたんを押すと、どういう仕掛けか、尻尾が付いている棒がかすかな音と共に震えだした。 何でも人間界で人気の品らしい。色町などでお使いになってみてはいかがですかな、と 妖力を失っていたおばりよんはニカリと笑った。 人間の閨事に関する飽くなき探求心には呆れるが、そこから生み出される道具の数々は、 特に最近のものは性能が良く、魅力的だ。 それでも、リクオとわりない仲になるまでは、そういった道具の類には一切興味を持たなかったのだが、 夢中になればなるほど、もっと彼を乱れさせたくて、こういうものも試したくなる。 獣の耳と尻尾を生やしたリクオはどんな様子だろうか。この張り型にもなっている尻尾を挿入して、ボタンを押したら…。 だが問題は、どうやってこれを閨で使うかだ。 まともにお願いしても、断られるに決まっている。 下手をすると、怒って一週間ほど口を聞いてくれなくなるかもしれない。 何とか穏便に、これを使う方法はないものか。 冷めていく膳をよそに、鴆はおもちゃを前に腕組みをしたまま、難しい表情で考え込んだ。
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