ご褒美だよ

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鴆は真剣に考えたが結局、これといった策も思いつかぬまま夜を迎えた。

そんな下僕のよこしまな思惑を全く知らないリクオは、いつものように手土産を持って鴆を訪ねてきた。

今夜は化猫屋特製のマタタビ酒と重箱入りの肴が土産だ。

マタタビ酒を見た鴆は、組員に湯と蜂蜜と湯割り用のグラスを持ってこさせた。

「家でそのまま飲んだ時にはなんだこりゃと思ったが…なるほどこうして割るもんなんだな」

「薬膳酒だからな。うちでも少しだがつくってるぜ。冷え症とか関節痛なんかにいいんだ」

これはいいマタタビ酒だから効果も高い、と金色の酒を行燈の明かりに透かしながら鴆は言った。

「今日は2月22日だろ?222ってぞろ目になるから、今日は猫の日だって化猫屋で祝ってて、そいつはその土産だ」

もともと甘いものが好きなリクオである。

蜂蜜と湯の配分で水分飲みやすくなった酒を味わいながらこぼした言葉に、鴆の目がきらりと光った。

そうか、猫の日か。もしかしたら、それで患者はあんな玩具を贈ってきたのか。

「何でも商売繁盛につながるなら結構だけどよ、昔はそんなんなかったよな?」

「リクオ、どうせならとことん猫の日ってやつを祝ってみねえか?」

突然の提案に、リクオは驚いた顔をした。

マタタビ酒と一緒に持ってきてくれた恰好の口実に、ここは全力で乗っかるしかない。

「百鬼を率いるなら、その一員である良太猫たちの気持ちを知っておいて損はねえだろ?」

「お、おう」

けどどうやって?明るい緑の目をキラキラさせて身を乗り出してくる鴆に、リクオは戸惑ったような表情を浮かべたが、

「まあ、まずは乾杯だ!」

まずは酔わせて警戒心を取り除く作戦に出た。