花に蝶
2 山吹色の羽織は再び衣桁にかけられ、リクオは襦袢一枚の姿で褥に横たえられた。 「結局、脱がすんじゃねえか…」 「脱がさなきゃ何もできねーだろ」 それとも着たままがよかったか?と緑の目を悪戯っぽく輝かせて顔を寄せる男の鼻を、リクオはぎゅっとつまんだ。 ささやかな意趣返しも、手首を捉えられ、首筋に顔を埋められると、もうまともに考えることができなくなる。 しかし、腰ひもを解かれ、乾いた手が胸元に忍び込んできたとき、リクオは我に返って身をよじった。 「鴆、オレ風呂…」 野暮は承知だったが、一度気になってしまったらもう止まらない。 普段、薬鴆堂へは風呂に入ってから来る。今日も総会前に風呂に入ったのだが、誕生祝いということで酒を注がれ続け、 ずっとどんちゃん騒ぎの熱気の中にいたために、汗とか酒臭さとかが身体にしみついているような気がして仕方がない。 すぐ戻ってくるから、と起き上ろうとしたが、鴆の身体がそれを阻んだ。 「だめだ。もう待てない」 リクオのそれよりも細い腕は思いがけない強さでリクオを布団に縫い付ける。 「汗くらい流させろ」 「んなもん、大してかいちゃいねえだろうが」 往生際悪く抵抗を続けていると、露わになった乳首をぎゅっとひっぱられた。 「ぁあんっ!」 思わず恥ずかしい声をあげてしまう。 自分の声に驚き、朱に染まった顔に何度も口づけられ、同時に胸や脇腹を、大きな手でまさぐられた。 愛撫に慣れた身体は、鴆の唇や手指の感触にいちいち敏感に反応してしまう。 「あっ…鴆…」 触れられる度に身体に電流が走り、身も心も甘く蕩けていく。 冷たい薬液をまとった指が奥まった場所を探り、慣れた手つきで内部をほぐしはじめた。 「あっ…あんっ…」 鴆に抱かれるまでは触れたこともなかったその場所は、いじられると何も考えられないくらい気持ちいい。 それでもそのうち指だけでは物足りなくなって、熱で潤んだ視界で鴆をとらえ、もう欲しいとねだった。 「あっ…あぁっ…!」 熱い肉の塊が、己の身体を割り開いていく。脈打つ怒張が根元まで収まると、 それは最初から己の一部だったかのように、リクオの中にしっくりとなじんだ。 肉棒はひとつになった感触を味わうように、狭い内部を穿った。 擦り立てられる度に、たまらぬ快感が電流のように背筋を走る。 突き上げる度に背がしなり、自分のものではないような嬌声が上がる。 激しい突き上げに揺さぶられながら、無意識に中のものを締め付け続け、 鴆はやがて押し殺した呻き声をあげながら、リクオの中に精を放った。 奥に出される感触に身体を震わせ、リクオもまた達した。 それでもまだ足りなくて、中にいる鴆を締め付け、行為をせがんだ。 毒の模様に彩られた身体が、再び覆いかぶさる。 「あっ…」 汗ですべる背中に、リクオは夢中ですがりついた。
――誕生日おめでとう。 そう言って優しく口づけられた気がしたが、快感と疲労で朦朧としていて、よく覚えていなかった。 |
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