いつだって僕は
6 外ではまだ雨風が吹き荒れている。 昂ぶる熱をぶつけ合ったあと、半ば意識が飛んだ身体を清め、清潔な襦袢に包んでやると、 鴆、と、心もとない声が呼んだ。 優雅な形の指が、鴆の襦袢の袖をすがるように握る。 いつもは強い意志を宿した金の瞳が、今は不安に揺れていた。 「オレ、何かおかしい」 何度か開いた唇が、やっとのことで言葉を紡いだ。 「気分が悪いのか?」 熱はあるかと反射的に額に手を伸ばすと、リクオはそれを嫌がるように首を振った。 「そうじゃねえよ。この間から…その…普通に達ってねえだろ…」 言いにくそうに、だが不安でたまらない様子で口にされた言葉に、 鴆はようやくリクオが言いたいことがわかった。 何度か射精させずに達かせたことを、「普通じゃない」と思ったのだろう。 鴆はリクオの額に口づけた。 「何もおかしくねえよ。されてあんまり気持ちいいとああなるんだ」 「けどよ」 「気持ちよかったろ?」 こくりと頷く愛しい唇をついばむ。 「あんたはどこもおかしかねえよ。安心しな」 「…」 鴆の言葉が効いたのか、金の瞳からは不安の色が消え、疲れと眠気でとろんとなった。 すぐに瞼が閉じ、鴆の袖の端を掴んだまま、寝息をたてはじめる。 薬師として、あるいは恋人としての己の言葉に全幅の信頼が寄せられていることに、 くすぐったさと、うれしさを感じると同時に、ほんの少しの後ろめたさも感じる。 何も知らないリクオに、いろいろ仕込んでしまっている自覚はある。 (ごめんな。けど一生大事にするから) 鴆は眠るリクオの額にもう一度口づけると、外の嵐の音からリクオを守るように、愛しい身体を抱きかかえて眠った。
|
||